食用水産生物に関する広範で多角的な知見を、入門者にも解りやすくまとめた食材図鑑。一方で、高度な情報を求める専門家の使用にも充分堪える内容も併せ持っている。全国どこでも見かける種ばかりでなく、限られた地方でのみ消費されるマイナーな魚種や一般には市場に出回らないような生物、日本以外での水産物利用などについても幅広く解説され、まさに食用水産生物についての情報を網羅した百科全書と言ってよい。全頁カラーで写真や図も豊富なため、イラスト描きの資料などにも役立つだろう。
スタイルとしては、大まかなグループ分けではなく、基本的に種ごとに項目を立てた上で、標準和名・学名・英名・市場名などの呼称から栄養価・旬・料理法・生態、漁業や加工に至るまでの解説を行い、さらにコラム・トピックスの形で生活史・民俗といった文化的な話題も盛り込まれている。鯉の焼き魚が一般的でない理由の一つは、武士の切腹前に最後の食事として供される風習があったためらしい(p.113)。
全4巻だが、各巻とも構成は「魚類+他の水産物」というやや変則的な形となっている。第1巻は、エビ・カニなどの甲殻類(カブトガニまで! ただしフジツボ類は第2巻)、魚類ではサメ・サケマス類・タラ・コイ・ナマズ類・アユ・ウナギ・イワシ類などが収録されている。