料理の物語というのは、麻雀ゲームとかと一緒で、既に先行作品の膨大な蓄積があるわけです。
つまり、先人の創りだしたパターンに従っておけば、ハズレが出来ることは絶対にない。
従って本作のような映画未満の作品が出来たことは奇跡というべき出来事なのです。以下、特徴を箇条書きで述べます。
・美味しそうでない料理
半分ぐらいの料理が美味しそうではありません。これはもう決定的な欠点です。特に、ザクロカレー、ジュテームスープ、イチジクサンド(恐らく皮を向いてない)は「うわぁ…不味そう」って感じです。ハッキリ言ってゲテモノです。
もちろん「不味そうな料理が実は美味しい」というのは料理漫画なんかでよくあるパターンなのですが、その場合必ず主人公による薀蓄なり理屈付けなどが示され、登場人物が味の解説をすることで、旨さに説得力が出てきます。
こうした正当化が本作では一切存在しないため、料理にまったく魅力が感じられなくなっているわけです。
・超展開の連続
料理漫画の王道というのは、「事件発生→主人公が料理を作る→料理が美味くて事件解決」という鉄壁のシークエンスです。本作も基本的にこれを踏襲しています。
ところが本作では、事件の解決が「料理の旨さ」ではなく、「柴咲コウの超能力」によるものとなっています。たとえば、柴崎スープを飲むと柴崎パワーで恋が叶っちゃったりするわけです。リアリティってなんなんでしょう。
この他の点でも、ストーリー展開は完全に破綻しています。というか、破綻せず繋がっている部分は存在しないと言っていいと思います。柴咲コウがどうこの世に生まれいでたのかすら、最後まで僕には解りませんでした。
・意味不明演出
料理作品の超演出と言うとアニメ版ミスター味っ子が思い出されますが、あれはまぁ酔って作ったんだろうな、ということで済みます。
しかし本作は、監督や演出家をはじめとする関係者一同がみんなヒロポンをキメて作ったとしか説明がつかないカオス演出の連続です。
例えば本作を見る際は、「臨終の際は苦しくて料理など作れるわけがない」「理由なく唐突にペットは食う人間はいない」「豚はしゃべれない」といった常識は捨てねばなりません。あまりにも想像を超え出ており上手く言語化が出来ないので喩えに頼りますが、シュールレアリズム、あるいはサイケ系プログレッシブロックの世界観を思い浮かべていただければよいでしょう。実際、おばあちゃんの死のシーンで流れる音楽は完全にプログレです。
僕は原作を読まずに見ましたが、とりあえず壮絶な作品でした。
テンポも遅く分かりやすい駄目シーンが有るわけではないので、「デビルマン」のように突っ込んで笑える作品ではないですが、味のある駄目映画だと思います。