著者は精神科医。本書は、拒食症と過食症の話から始まる。序章では「指導を受けた先生から、「食」という物差しで、精神病者の病理を理解してみるようにと勧められた」とか「「躁うつ病と食行動」といった論文を書いたり」したと書いてある。したがって、そのような内容を期待して読み始めた。しかし、第1章から第二章にかけては「絵本の中の食」として、「赤ずきん」「ぐりとぐら」「どんくまさん」「私のおふねマギーB」「はらぺこあおむし」「三びきのこぶた」「ちびくろサンボ」「三びきのやぎのがらがらどん」「おおかみと七ひきのこやぎ」「かいじゅうたちのいるところ」「100まんびきのねこ」「くわず女房」といった絵本のストーリーが心理学的に説明されている。それを読んでいると、実感としては、精神科医が深読みして、それぞれのストーリに登場する食にまつわる内容について後知恵でもっともらしく解説しているだけのような気がした。子どもも大人も、絵本というものを、そんなに蘊蓄を傾けてあれこれと分析的・理知的に読むものなのかと疑問に思った。また、民話の再話者や絵本作家たちが、子どもを対象にして、そんな裏の裏まで考えて周到にお話や絵本を作っているとは思えない。でも、本書の中心は、この絵本の分析の章のようだ。後の章で、また拒食症などの話が出てきて、最後の章ではうつ病に触れられている。でも、本書の最後の締めは「早寝早起き」と「バランスの取れた生活メニュー作り」(必ずしも食のメニューではない)がからだにいいですよというもの。お子様ランチで始まって薬膳で終わるような、なんともちぐはぐな食事を出された印象しか残らなかった。あとがきで、著者は自分のことをかなりほめている。この本は、著者の自信作らしい。「こういうのって、"自己満足"っていうやつかもしれませんね。」とも書いているが。