こういった議論を待望していました。どうもわが国においては物事を素直に受け入れるのが危険なのです。「実は」とか、「その背景にはこういったことがありましてなかなか本音の議論ができなくて」とかいう話が多すぎます。勿論その底には、日本人のパラノイア的思考、潔癖性、物事全てトレードオフという事実を感性として受け入れられないある種の幼児性があるようなのですが。地産地消は(全てではないにしても。また意識として持つのは必要)表向きはエコだが実際は経済効果狙いでむしろ環境・化石燃料節減上もマイナス、農薬・化学肥料・遺伝子組替えは悪で有機は善という単純思考(そのため化石燃料を膨大に使用する実態は矛盾しますがそういう事をなかなか言い出せない雰囲気が醸成されている)等々、著書で一つ一つ疑問を呈し、取り上げています。勿論著書はそれが誤りではないかとのスタンスから論じていますので、そこは逆に客観性を持って合理的に判断する必要はあるでしょうが、古い言い方ですが著者の科学的説明は非常に説得力があります。むしろ浮き彫りになるのは日本の農業・食品関連規制のご都合主義、絶対安全でなおかつ美味な食品を過剰に求める消費者、食料自給率と言いつつ過剰な生産・品質維持欲求、勿体ないといいつつ恐るべき量を不必要に廃棄しているわれわれ自身の意識です(極論すれば、すべての食品は発ガン物質なのですし、加速する人口増を賄うのは待ったなしの事実)。矛盾する消費者行動こそわれわれが一番顧みるべき問題点なのではないか。良質な議論には正確な知識と情報(未知数部分があるならあるで)が必須です。著書はそれを正に提供してくれます。