ボーダレスなグローバル社会における経済を理解しようと思うのなら、世界の歴史を知っている必要がある。ただし世界の歴史といっても、色々な切り口がある。学校の授業で教わるのは政治を主とした歴史であるが、美術、音楽、文化など色々な観点から歴史を見ることができる。本書は「食」をテーマに世界史を取り上げ、経済との関連に言及することを試みている。
本書によると、「食」を支配するものが世界経済を支配するという。英米は「食」を資源として捉えて、大規模化と効率化を目指し、「食」の工業化を進めていった。一方、日本や中国、またフランスやイタリアなどのラテン系諸国は「食」を文化と考えていた。著者はこの違いが、世界を支配する原動力の差になって現れたと考えている。しかし、現在では、「食」の工業化も行き詰まりを見せはじめているようだ。例えば効率よく大量生産するために牛に与えた肉骨粉が起因となったBSE問題はその典型である。そしてハンバーガーやコーラに代表される工業化された食品は伸び悩む一方、欧米では日本食が流行っているという。健康志向にマッチしているからだ。
ただし、これだけでは英米を中心とした「食」の工業化を進めた国々、ファーストフードに代表される国々が衰え、「食」を文化と考える日本を初めとするアジアの国々、スローフードに代表される国々に主導権が移ってくるという本書の論調には同調できない。中国やインドの経済成長を見て、やがてアメリカを追い越すのではないかという点については、感覚的に納得できる部分もあるが、「食」の工業化が行き詰まりを見せる一方、日本食などのブームからアジアに主導権が移ると言う考え方には説得力を欠く。
私の理解力不足であったのならお許し頂きたい。