絵で言えば、黒を全く使わずに描いた友情群像。子供は傷つきやすくヘコみやすい反面、いい友達がいれば大抵のことは乗り越えられる不思議な強さを持っている。原作者はもちろん監督が注目したのも、子供の不幸や不運の詳細ではなく、この不思議に前向きな抵抗力の方である。現代物に作り替えたからと言って「お約束」のように家庭崩壊や少年犯罪テーマを持ち込まず、陳腐な社会派児童劇に流れないのがよかった。賞狙いとは無縁の所で製作者側も思いっきり子供に返って真剣に哀しんだり、飛びっきりフェアなおとなになって子供と心を通い合わせたりしている。その結果、点子ちゃんよりもエミールよりも、本作の子役たちが一番現実のドイツの少年少女に近い伸びやかで自然な演技をしている。(それだけに末恐ろしい?)また、音楽と場面のマッチングはケストナーの映画化作品中ピカイチ。バッハのオラトリオと雪合戦がこんなにピッタリくるとは!(が、思えばどちらも典型的なクリスマスの風景だ。原作が書かれた当時も今も。) ハリウッド映画やラップのアメリカン・カルチャーにドップリ影響された「壁を知らない子供たち」を、ヤレヤレという感じでちょっぴりからかい気味に、でも意地悪でなく撮っている監督の視線にベック先生に通じる寛大さと温かさを感じる。子供と「友達になれるおとな」の頼もしい包容力を。ケストナーはドイツ人離れしたユーモア感覚が光る作家だった。掛け値なしのナンセンスに大笑いする能力もあった。この映画を観せたら、今時のドイツの坊ちゃんラッパーを大いに気に入ったかもしれない。二度続けて観たあと、今年のクリスマス・プレゼントはこれに決めました。