風魔小太郎の生き様を上中下巻,各巻400ページ以上にわたって描こうとする作品の上巻.
歴史の流れに沿いながら,この先の展開に関わってくると思われる人物が随所に登場してくる.その中には実在の人物もいれば架空の人物もいるが,ストーリー展開上で上手く絡みを持たせ,架空の人物までもがあたかもその場にいたかのように表現される.自然と先の展開を追いたくなる.
上巻の前半4分の3は関東北条家の忍びとしての小太郎を描いている.経緯はともあれ,結果的には歴史上の敗者となってしまった北条家に仕えていた小太郎は,北条家さながらに苦難の道を生きる.秀吉の全国統一により北条を失った風魔一族は,それぞれの生き方を選択する.小太郎にとっては,北条家から解放されたことで,かえって自分らしい生き生きとした道を歩む.後半4分の1には,そういった小太郎が小気味良く描かれる.
上巻を最後まで読んだ者は,必ず次ぎに進みたくなる.本巻はそういう魅力ある区切りで終えられている.