ここの所また台頭してきた男性声優ソロ歌手活動。同時期に
鈴村健一、宮野真守がアルバム新譜マキシなどリリースという流れの中で
とりあえずの比較で考えると、こちらの小野大輔はかなり素の魅力を
前面に押し出している印象が強い。同様に本人の人柄や個性が自作歌詞
にて思う存分表現されている鈴村ほどの器用さはないが、それでもどこか
一昔前の素朴さを、てらうことなく飾らない歌唱に乗せている小野の作品群は
本人に感じるままの印象で好感を持つと同時に、難を言えば逆にその
真っ直ぐさから、以前から全面的に楽曲プロデュースを行っているであろう
コンポーザーである渡辺拓也の色合いが強すぎるきらいがあるような印象を受ける。
レーベルや方針の違いもあるだろうが、様々なアーティストの楽曲提供を
敢えて受けているように見える宮野真守とも当然異なる。左記のように
基本的に歌唱力で勝負するタイプではない。それでも様々なキャラソンを歌いこなし、
その"歌演技"の存在感には定評があるだけに今後もっと幅広いチャレンジを
さらに続けていって欲しいとも感じる、伸びのよい美声の持ち主。
その「可能性」を感じる「プリズム」や「ダイアモンドダスト」「真夏のスピカ」...
正直器用に男女のロマンスを歌うほどの甘さは持ち合わせていない。
それでもどことなく柔和な甘いマスクでありながら、その裏表のない人柄に
嘘のつけない純粋さを感じ、それが如実に反映されている、ひたむきな歌唱に
聞き入る切っ掛けをくれる。それだけに単調に流れてしまいがちな楽曲群の変化の
なさを残念に感じながら、それでもそれをよしとするか否とするかはファンなど
受け手側の判断に委ねる部分が大きいというのも、やはり声優アルバムならでは。
雑誌インタビューにて「歌や写真などの声優以外の仕事は御褒美のようなもの」
と語っており、さらに自身の声優としての来歴についても、これまで何度か
味わった挫折を繰り返し、その度に支えてくれた人たちがいたからこそ、とも。
その思いを綴ったラストの「ありがとう」は感動的な良作。思えば本アルバムは、
そんな彼自身の飾らない思いの結晶でもあるのかもしれない。冒頭オリジナル曲
「春空」も「try&errorを繰り返しながら、それでも前に進んでいく」―そんな
力強く爽やかな意思表示でもある。タイトル『風花』とは早春に舞う儚い雪片...
声優としての基盤をまず見失わず、それでも歌に顔出しにマルチな
展開を惜しまない。かつてのベテラン水島裕や井上和彦などが歩んだ、
けれどさらに進化した今時の男性声優像は、もっと清く正しく
柔軟にあるべきと無意識のうちに声高に叫んでいるようである。
(思った以上既存CD収録曲が多く拍子抜けしてしまったため星3つ)