今までこの人の本は、「閉鎖病棟」で知り、「臓器農場」で驚き…と少し、グロテスクなイメージがあって、何か怖いもの見たさで読んでみよう…というイメージだったが、この風花病棟を読んで、あまりの文章の綺麗さにびっくりしました。
文章が綺麗というとすぐに、川端康成とか谷崎潤一郎を思い出す方が多いと思いますが、この文学的で嫌味のようなわかりにくい美文ではなく、文章が理論整然として、わかりやすく、しかも奥が深く、読みやすい…という感じの文章です。
小説のあらすじ以上に、文章の綺麗さに感動したのは久しぶりです。というかあまり経験ありませんね。
それくらい、文章に感動しました。
この作者は東大出て、TBSに務めて、それをやめてもう一度九大の医学部を受けなおして合格し、現在医者をしながら執筆を…というもう考えられないくらい文武両道というのではなく、文理両道?とでもいいますか、もうすごい人なのだろう。現在も中間市で病院を経営してらっしゃるという事だから、何か一度会いに行ってお話を聞いてみたいと強く思う。
自分がこれだけ感銘を受けた本は最近なかった…と思うので、その作者が自分の職場から1時間くらいの所に住んでらっしゃるのだから、何とか実現したい。しかしお会いした所で何を話せばいいのか(笑)。とりあえず、その先生にかかれるように病気になるか?
本は、10篇の短編集で、それぞれ違う病院や医者が主人公で描かれている。そのどの話も心を打つ。特に医療というものがその場限りのものではなく、永遠に続いていくもの…というような視点の話しが多く、多分現場では、何代もわたって病院に通っているような繋がりが実際に繰り広げられているのだろう。
「赤ひげ」のような拳を振り上げる医療物語ではなく、日常を淡々と描き、その中で癌の告知とか、親子の葛藤とか、戦争とか、ベトナムの独立運動…などが絡んでくる物語の作り方が秀逸。しかも最後の感想は各自が自分で感じなければならないような、控えめな終わり方。
何か本を読んでいて、久しぶりに心が震えたとでもいいますか、いい瞬間を体感することが出来ました。