文明化が進み、現代の日本人には風土に対する関心が薄れてきているかもしれない。あるいは、それは克服すべきものと意識されているのかもしれない。
しかし、いくら文明が進んでみたところで、風土が精神や思考方式、感性を養ってきたこと、それが今も陰に陽に作用していることは、風土に裏打ちされた宗教の影響力が国際社会でますます大きくなっていることからも頷けよう。
学生時代に恩師に薦められ、世の中にこれほど面白い本があるのか、と思ったほど熱中して読んだものだ。政治的・イデオロギー的視点から本書を批判する向きがある。また地理学的に精度を欠く点も指摘されている。それぞれ傾聴すべき見解である。
しかし今、再読し、風土に着目してそこから人間性や文化の考察を進めることの価値は失われていないと感じた。こうしたスタンスは最近話題の武澤秀一『法隆寺の謎を解く』(ちくま新書)、特にその終章「日本文化の原点を求めて」に顕著に見られる。和辻の流儀が現在にいたるまで脈々と受け継がれ、新しい展開を見せていることは興味深い。
『風土』は決して風化していないのである。