この短編集の密度、完成度の高さは凄い!「珠玉」という言葉は宣伝の常套句だが、この短編集にこそふさわしい気がする。
恋愛の究極的なかたちを様ざまに描いている。その筆致は「いま」とズレてないし、一方で古典のような風格、盤石さがある。山田詠美は、「日本」というかっこを外しても、いま現代文学の最前線にいるのではないか。この短編集だけを読んでも、決してこのクオリティーがフロックでないことがわかる。
この短編小説共通するのは、男の主人公がみな、ネガティヴには「3K」と呼称される職業に従事していること。「あとがき」には「日頃から、肉体の技術をなりわいろする人々に敬意を払って来た。いつか私自身にも技術と呼べるものが身に付いたら、その人たちを描いてみたいと思っていた」とある。山田詠美が書く人物たちは3Kとか肉体労働者のステレオタイプなイメージを突き崩す。逆に、肉体という実存を持っていることが、恋愛を描く際に絵空事でない輪郭を与えている。「一緒に飯食って、セックスして、寝る」そのことが人間にとってどれだけ難しいことか。どれだけの人が、そのしあわせを分かち合える相手と遭遇できるというのだろう。
しかし、どの短編も、どの人物も、唸ってしまうくらい面白い。それこそ狂気の域までイっちゃってるただならぬ関係もあるけど、まわりに呆れられても“本人たちさえ良ければ”ってのをあえて肯定的に力強く言えちゃえれば、ねぇ。なかなかそんな出会いってないもんです。
キャラメル・モチーフの装丁もナイス!まさに手のかかったパッケージに収められた、滋養豊富、風味絶佳な六粒のキャラメル、といった趣の短編集。