ワタルと同じ20代のときこの本を図書館で読み、主人公すみれはなんていい女なんだろう!と衝撃を受けました。すみれは、背が高くて骨っぽい指をしていて、若い子のふっくらとしたえくぼのある手にコンプレックスを感じ、仕事ができてしっかり者、会社のできないオヤジ達には「あのハイミス」と陰口をたたかれ、母親には「すじこばっている」と言われる30代半ばの独身女性ですが、どこか女として可愛らしく柔らかいのです。ギスギスしていないのです。いえ、多分作者はそのつもりだったんでしょうけど、すみれの言うこと、していること、考えていること、すべて、温かく軽く楽しく明るく丸く、とにかく「可愛い女」なのです。どん底気分で泣いている彼女も、なんだか楽しそうに見えるから不思議。実際にこんな女性がいたら、男がほっとかないよなあ、というタイプ。
12歳も年下のワタルの前では気を許しながらもどこか緊張してワタルの一挙一動に少女のように心を揺らし、ずっと年上の伊豆サンの前ではいい女を演じながらもどこか寛いでいる。何度読んでも、どうなるんだろう、どっちを選ぶんだろう、とドキドキします。それに、すみれが作る料理も、伊豆サンが食べに連れていってくれる料亭の料理も、おいしそう!!
脇役の既婚・子持ちの女友達(オバハン)の描写もとても愛があって感じがいいし、同じくハイミスとして友だちになったみどりも、とても楽しく独身生活を送っている女性として描かれています。
若くてハンサムで心がこまやかな男の子、頼りがいがあって包容力と財力がある優しい中年、おいしい料理、宝塚、おしゃれ、仕事・・・独身女性が好きなアイテムがそろった小説。
すみれの年をとっくに越えた今、やっとこの本を手に入れてまた何度も読み返し、すみれやほかの登場人物(女たち)がこんなにステキなのは、田辺聖子氏ご本人が女として人として魅力的だからだろうという結論に達しました。読んだあとでとても和めます。この小説、田辺氏の本の中で一番好きです!