献身的な女性(美和)が統合失調症の男性(晃)を癒していく成功体験の過程で一体感が生まれ、それがピュアな愛情へと発展していくプロセスを純愛小説として小笠原さんは表現したかったのであろうか?と疑問を感じています。
別の見方でこの本を読むと、若い娘が自分の母性に酔ってしまって、健常者(暗い過去があるとしても)から発する眩い愛情を降り注ぎ、ありえないと思いつつも淡い期待を持つ精神的に弱い患者(晃)が意外なほど積極的に行動して受け入れてしまったことによって、周囲の人達を含めて不幸な事態を招いてしまったとも読み取れ、小笠原氏は精神医療に従事する者達への心構えに警告を発していると私には感じてしまいました。美和はとても魅力的な優しい女性なので、もどかしくてたまりません。
最後には、過去の経緯を考えるとかなりあっさりと幸福な結婚をする晃(病人だから仕方ない?)と比べて、虐待を受けた娘達を受け入れる教会の寮で孤独に働く美和の姿が印象的です。それは聖女かもしれませんが、自分の狭い世界(価値観)でしか生きることができなくなってしまったとも思えます。愛娘を持つ父親としては、不幸な結末にしか思えません。二人を隔てる現実は果てしなく大きく、そもそも一致するはずもなかったのでは・・
医療従事者には母性愛に溢れた信念を持った人が多いが故に、自分を客観視する強さと経験が必要なのでしょう。(本当にたいへんな仕事です。)この本では、医療に従事する年長者からのサポート(説得力のある指導)があまり印象に残りませんでしたが、実際の現場でもそうなんでしょうか? それはとっても危険なことですね。