他のレヴュアーさんも書かれていますが、この壮大な三部作を読み終わってのちまず思ったのは「脇さん翻訳本当にお疲れ様でした」ということでした・・。
この作品は、文章がとにかく長い。本気で長い。台詞一切なしのまま場面が3ページ5ページ平気で続きます。巻数だけで考えればトールキンの『指輪物語』の半分以下ですし、解説に名前が出てくるル・グィンの『ゲド戦記』シリーズと比較してもコンパクトな作品の筈なのに、純粋な体感としては本作が一番読んでいて「長い・・」と感じました。理解を超えた余りにも長い描写の応酬に途中何度か「この作家は何かにとりつかれてるんだろうか」と疑いを起こしたほどです。そういう描写が世界観に奥行きを与えるものでしょうし、良く読み込めばその描写の味や意味が分かるのだと思いますが、正直なかなかそこまで付き合えず、また一行一行がそこまで美しいとも感じられず、物語の筋に重要でなさそうな部分は何回かナナメ読みしてしまいました。
繊細な世界観は本作の持ち味なのでしょうが、その分ユーモアの盛り込みが少ないからか、読み通すのに余計に忍耐が要るのかもしれません。コッケイな人物って余り出てきませんので。ドビー(大好き)みたいな突き抜けたヤツが一人欲しい・・。キャラクターについては全体的に、もっと彫りこみというか、癖や仕草など細かい特徴が挙げてあればより愛着と実在感が喚起されたのかなあと思います。雰囲気を壊さないためにあえてあの位にしてあるのでしょうけれど・・(そうであれば、その辺のバランスはもう好みの領域ですしね)。ルードなんかはいいキャラなのに、出番が少なくて個人的には残念でした。
加えて、物語の結末(モルゴンの正体)も、一巻の時点で予想した内容がほぼそのまま当たっており、その他の箇所にも意外性はなく、ちょっと物足りなく感じました。モルゴンやレーデルルに関しての<謎>や、お話の流れ自体は2巻までの方が面白かったように思います。3巻は重厚な読み応えはありますが、話の動きが非常にゆっくりですし、戦争という重い場面も続き、また、人物の内面の葛藤に関するドラマも1,2巻ほどではないように思いました。敵対していた人たちとの最後の対決のくだりも、あっさりしすぎていたような気がします。
ともあれ完成度の高いファンタジー作品であるとは思いますが、個人的には「必読!」とまでは言いがたいですし、明らかに読者を選ぶ作品だと思います。時間のないときに読むのも辛い&勿体無いでしょう。読む年齢も大きいかもしれません・・。本作の<自分の血と向き合う><生まれがどうであれ、どんな人間になるかは自分自身が決める>というメッセージはとても重要なものですが、私は『ハリー・ポッター』のほうで、自分のパーセルマウス能力に悩むハリーと一緒に涙流しながらそれを刻んだ世代(?)なので、どうしても反応が鈍りました。
「ファンタジーが大好き!」という方には一読をお勧めいたします。