ジャズハーモニカ奏者としてのトゥーツよりも、「ハーモニカ小父さん」の異名に慣れ親しんでいる方には、これはちょうど良い彼の履歴書となり得ることだろう。
彼のメインの活躍の場であるジャズ畑のナンバーから、60年台の音楽界を席巻したボサ・ノヴァ、さらにレコードシーンを一色に塗り替える前のロックを含むポップスの名曲まで、ヴァラエティに富んだ曲目を、彼は実に楽しげに吹きこなしている。ブルージーな曲も彼にかかれば心躍るような気分で聞けるのは、トゥーツが音楽を心底楽しんでいるからだろう。老いてその気概はますます深まっていることが、ハーモニカと言うちっぽけな楽器の、煌くような冴えた演奏から知れる。
これはただのベスト盤であり、ここを入り口としてトゥーツの深遠に浸るもよし、と思えば、もっと聴くべき名盤は山ほどある。だが始まりとしてはこれほど贅沢なアルバムはなかろう。昭和生まれの貴方なら、幼い日より聞きなじんだ名曲に出会えるだろうし、若い皆さんも気張らずに豊かな音色に身をゆだねれば、ひと時オヤジやオフクロの魅入られたメロディ・ラインに共感することが出来るだろう。ジョン・レノンも魅了された彼のハーモニカの魅力は、決して息絶えてはいない。
おっと、彼の本職であるギターや、これも得意とする口笛も堪能できるというオマケつきだ。