安吾の自伝小説はどれも静かなトーンをもち、それでいて胸をかきむしりたくなるような切なさに満ちている。「生存それ自体が孕んでいる絶対の孤独」(「文学のふるさと」)が、作者の内面にくろぐろと横たわっている感じがする。
この自伝選集には、長島萃や葛巻義敏が登場する「暗い青春」が入っていないが、かわりにその原形で葛巻をメインに据えた「青い絨毯」が収録されている。長島については「篠笹の陰の顔」に結晶化されているので、この2作で「暗い青春」の世界をブローアップした印象がある。編集の妙というべきか。
おおよそ安吾の成長過程に沿って編集されているので、巻末の年譜と対照して読めば2倍楽しめる。収録作は以下のとおり。
ふるさとに寄する讃歌
石の思い
おみな
風と光と二十の私と
二十一
母
篠笹の陰の顔
青い絨毯
天才になりそこなった男の話
流浪の追憶
二十七歳
いずこへ
三十歳
魔の退屈
(このあと、自伝とは少し違う参考作品がまとめられている)
勉強記
オモチャ箱
私は海をだきしめていたい
わが思想の息吹
*解説&年譜(七北数人)