1950年代も終わろうとしていた頃、ある一人の少年が「リフ族の首長」という冒険小説を、心ときめかせながら読んでいた。それはイスラム系先住民によるアメリカ人誘拐に端を発した国際的紛争―砂漠を舞台に、アメリカ大統領とアラブの猛者の、虚々実々の駆け引きを描いた冒険譚だった。少年の名はジョン・ミリアス。彼はいつかこの物語に挑みたいという夢を抱いた。そしてその夢は結実した。―映画という形で。
物語は、1904年のアフリカ・フランス領モロッコが舞台。莫大な資源とその利権を求めて、世界の列強がモロッコに介入。フランス、ドイツ、イギリス、ロシア、アメリカなどの国々がひしめき、一触即発の緊張状態にあった。こうした事態を憂えたイスラムのリフ族首長ライズリ(ショーン・コネリー)は、諸外国の支配から故郷を解放するため、アメリカ人のイーデン・ペデカリス夫人(キャンディス・バーゲン)と彼女の二人の子供を誘拐。一方、その報に接したセオドア・ルーズベルト米大統領(ブライアン・キース)は、この事件を時期選挙の宣伝に利用する事を企み、大西洋艦隊をモロッコ沖へと派遣させる。「風」(ライズリ)と「ライオン」(ルーズベルト)の、火花散る戦いが、熱砂の中に幕を開ける―。
超アウトドア指向・タカ派の映画監督ジョン・ミリアスが、アメリカの大統領で国民から最も英雄視されている、これまたタカ派のテディ君を思い入れたっぷりに描写(あんまり共感できないけど)。
イスラムという宗教の解釈に関しては、細かいところで突っ込みどころはいくらでもあるのだが、そこはアメリカ映画として割り切って観るべし(ショーン・コネリーの流暢なイングリッシュもご愛嬌)でも見た目はアラブ系に見えるから不思議。
そしてこのイスラムの猛者相手に一歩も退かない女丈夫をみせる、キャンディス・バーゲン姐さんはまさにハマリ役、なのだが、実はちょっと注目したいのは、彼女演じるイーデンの十二歳の息子・ウィリアム(サイモン・ハリスン)。実はこの少年、どう考えてもミリアスの分身としか思えない。
最初は、リフ族の野蛮な行為に不快感をもよおす親子だが、行動を共にするうち、親子を手厚くもてなすライズリに不思議な友情のようなものを感じるようになる。特にウィリアム少年は、「漢」としての憧れのようなものをライズリに抱くようになってゆくのだ。それは、本のページをめくりながら、冒険への夢を馳せた少年ミリアスの目線そのものなのだ。きっと。
そして、アメリカとの交渉の場所に向かう途中、ライズリはフランスとドイツの軍隊に捕まってしまう。
「ビッグ・ウェンズデー」でサーファー達を、まるでガンマンのように横一列に並べ、大波に立ち向かわせたミリアス。本作のクライマックスでも、ドイツ陣営にアメリカ海兵隊がワイルドバンチの如くライズリを奪還しにいくカッコイイシーンがあるのだが、彼らの先頭を行くのは何とキャンディス姐さん!緋牡丹お竜もタジタジの鉄火肌。たまんないッス!
「風とライオン」は、ミリアス少年が夢見た活劇と、漢たちと、そしてもちろんイイ女!たちへの讃歌を高らかに謳いあげた、心の映画なのだ。
しかし、キャンディス・バーゲンが母上、などという妄想を実現させおって。
まったく映画監督ってのはけしからん!