この書籍を手にとったのは、なにより表紙のルネ・マグリットの大きな岩が海上に浮いている、じつに面白い絵があったこと。
そして、文庫の帯に
「はるかに高く遠く、光の過剰ゆえに不可視のまま、世界の中心にそびえる時空の原点―類推の山。(中略)“どこか爽快で、どこか微笑ましく、どこか「元気の出る」ような” 心おどる物語」とあったことだ。
実際に小説を読みはじめると、どうにも止まらない。
ある男性のふとした思いつきが、"私も同様のことを考えていた"という哲人の「類推=アナロジー」という魔法で次第に膨らみ、さらに賛同者をよびこみ、実際にそこに集ったものたちを旅へと向かわせてしまう勇気となり、冒険者たちの希望となるのだから。
果たして、その類推された目的地(不可視の山あるいは類推の山)は実際に見つかることになり、彼らはその山に上っていくことになる……。
この過程が何ともいえないーー。読者もまた、読みながら類推の山の実在を信じ、一緒にそれを見つけ、山に上りたいと思うようになる。男性と哲人、そして男性の妻、そのほか山を登るために集まったメンバーたちの有様を読むほどに、元気が出るのだ。
山にまつわる話中話もじつに美しい。(翻訳がじつにいい!)
私は山に登ったことはないが、山に上るとはこんなにも魅力的なものなのか……と思う。