古い本だし読む人は少ないだろうと思うが、もし棚にあれば引っ張り出して読んでみることを
お勧めしたい。頼山陽といえば「日本外史」が通り相場だが、この天皇論の全文である「政記」
こそ山陽が生涯を通じて書き続け、亡くなるまで推敲を重ねた重要な書物である。
明治維新の立役者の思想的な背景が日本外史とはよく言われるが、実際は同じように(むしろ
政記のほうが)重要視され親しむ人間は多かった。(例:伊藤博文が洋行時に持参し日々読む
ことを怠らなかった)
内容は歴代天皇の歴史上の事跡とそれに対する山陽の論述(論賛、論文)からなる。
明治以降天皇の神格化の中で、この政記は歴代天皇への厳しい批評・論述が含まれることで
全文の発行が難しくなり、一部伏字や論文の部分の削除などが行われ、世間の目から遠ざけ
られた。(そのために、政記はあまり重要視されず読まれないが…)
しかし、政治を執るもののあるべき姿、人民にいかに安寧をもたらすか、人を見る目の修養、
簡素な生活・政治体制・簡素な税制などなど、今の時代に学ぶべきものは多く、為政者に
目を通して欲しい本だが。(読まないだろうな今の政治屋は。)
この本は頼山陽の研究者としては第一人者の安藤英男さんが、天皇の事跡部分を外して論文の
部分だけを抜き出して現代語訳したもの。漢文の読み下し文の感じで読み難いかもしれないが
機会があれば、是非。