箱入りの全集版はけっこうな分厚さがあるが、本書は新書サイズになって、さらに2冊に分かれたので、お気に入りの静かなカフェで読むにはぴったりである。再読してみて驚いたのは、不意打ちで竹をスパッと割るような終わらせ方をしているので、とてもミステリアスだったこと。幾様にも解釈可能で、その足場の不確かさが催す不安感みたいなものがたまらない気がする。かなりシンプルな言葉の積み重ねで淡々と綴られているのに、清流の奥の淀みみたいな底知れない深さがある。短篇の題名は文中のある会話から採られていることが多いけれど、そのセンスも秀逸だ。アメリカの冴えない郊外のミドルクラスの人々が主人公となった悲哀と渋いユーモアと謎が詰まった13篇。