2010年4月9日に井上ひさし氏が亡くなった。たいへん残念である。井上ひさしの戯曲は可能な限り読み、ときどき舞台も見たけれど、いちばんの傑作は1984年にこのこまつ座旗揚げ公演で初演された本作である。
登場人物がすべて女性という意表をつく設定で、樋口一葉の生活と人生を織り込んだ作品は、スキのない傑作である。毎年、お盆の晩に樋口家を訪れる幽霊・花蛍(ほとんどの公演で新橋耐子が演じていたが、さすがに最近は他の役者さんに代わった)を狂言回しにした趣向が秀逸。1984年の初演時の舞台を収録した映像をNHKからDVDで出してもらえないものでしょうか(BS2で再放送されましたけれども)。渡辺美佐子、香野百合子、上月晃、風間舞子、白都真理、新橋耐子の強烈な、パワフルな舞台が忘れられません(演出は木村光一)。
登場人物がすべて女性という趣向は、井上好子プロデュース、つまり女性がプロデュースする芝居だからと井上ひさしは考えた、言ってみれば井上ひさしが井上好子にプレゼントした芝居なのだろうと、娘(三女)の石川麻矢が書いている(『激突家族』中央公論社、1998)。女性だけのキャストという趣向は『マンザナわが町』にも引き継がれました。これも悪くない作品ですが題材が特殊で地味なためか、再演されていないようです。