香山先生の著書を読むのはこれで4冊目ですが、これは読みとおすのに努力を要しました。別に内容が難しいからではなく、全く納得できなかったり、読者が本書を読んでいるうちに「頭が良くなった」という感覚を抱いていると勝手に確信しているような文章に強い違和感を感じたからです。お金を払っているので、何とか読みましたが、強い葛藤を感じさせてくれる本でした。他の著書でもそうなのですが、彼女が主張したいことは、「自分の価値観を見直すこと」「問題を距離を置いて眺めること」「いろんな視点を考慮に入れること」という程度のことなのです。このような考え方を別にRIFと名付ける必要は全くないように思います。R:現実検討識 I:知識、情報 F:空想や夢 という分類なのですが、とくにIという分類は無意味なように感じました。いつものように本書でもいろんな症例や彼女の豊富な読書に基づく様々な資料を出してくれ、それ自体はそれなりに興味深いものがあります。しかし、論理的な構成力がないのが彼女の欠点であり、それらの資料をRIFの根拠としようとしておられますが、それぞれの例でいくらでも反論ができるように思われました。理想と現実のギャップに悩むのが人間の在り方であり、そのバランスをとっていくことは重要というよりは、不可欠なことです。現実を理想に近づけようとする努力の一つとして知識の獲得や情報収集があるのであって、それを一つの新たな次元として扱うことに何のメリットもないように思います。このような底の浅い思い付きを得意揚々と公に示す彼女がちょっと哀れに感じるし、それを持ち上げる出版社の姿勢があさましく思われます。売れれば何でもいいのでしょう。しかし、これで大学教授とは。彼女の学生はどのように思うのか、ある意味で興味があるところです。