街道文化を研究している助教授、神崎圭一郎の料理譚という形の小説。
食通の神崎がうまいものを食らい、
思わず「う、うまい」と唸る短編が20収録されている。
読んでいて腹が減る小説だ。
口の中いっぱいに唾液がたまり、
読みながら「うまい」とつぶやいてしまった。
テレビのグルメ番組で、
箸さえもまともにもてないようなタレントが
高級な料理に舌鼓を打っている様子を見るより、
ずっとずっとリアリティがあった。
おいしさを伝えるための伏線が張り巡らされている、
そんな話ばかりが並ぶ。
食べることは幸せである。
おいしいものを食べることは、まことに幸せである。
「食」という本能の裏にある幸福と人情と悲哀のドラマ。
ときに笑い、ときに泣けた。
食い意地が張っているということが、
けして意地汚いことではないと感じさせる上品さもあった。
あぁ。
うまいものが食べたい。