「手塚治虫」の名前に惹かれて手にした本だが、「監修」なので作画は別の作家が担当している。
このシリーズが非常にユニークなのは、マンガ本体では通史を記述するのではなく人物に焦点をあて、様々な作家が担当していることだ。実在の人物だけではなく、(存在したとしても不思議ではない)仮想上の人物も登場させて歴史上の事件を関わった人の視点から描いている巻もあり、どの話も非常に分かりやすい。
巻末には「深く知るための資料」「年表とワンポイント」としてセンター試験レベル(多分)は軽くクリア出来るような充実したページがあるばかりか、クイズ形式の問題までついている。受験生が読むことも強く意識した丁寧な構成だ。
この巻についていえば、「孫と涓」(作画・西村緋禄司)の方がより手塚治虫に近い作風で、有名な馬陵の戦いのエピソードも迫力がある。「項羽と劉邦」(作画・堀田あきお)はよりシンプルな絵で表現しているが、異相と言われた劉邦が少々イケメン風なのにちょっと不満。
登場人物のせりふは平易な日本語に直しているが、有名な文言に関してはもっと漢文に近い形で取り込んだ方が話の迫力は出たように思う。例えば鴻門の会の後では、范増は「図りごとのできぬ項羽どのには天下は取れん」と第3者的に評論するより「ああ、豎子与に謀るに足らず!」と嘆いてくれないと物足りなく感じてしまう。
受験前に出会いたかったシリーズです。