モーツアルトと書いてあればなんでも読むという「モーツァルト病」の私としては書店で見てすぐに買った。そして、第1章「モーツァルト カメレオンの音楽」を読み、同じような論旨の本を読んだなあと思った。よく考えてみると、岡田暁生『恋愛哲学者モーツァルト』(新潮選書)だった。しかし、青柳さんの本の方が先だった(2006年9月,みすず書房)。論じ方は違うものの、モーツァルトの音楽の本質をついていることは共通だった。ロマン主義の悲劇だいいちの感情に対して、ロココ趣味のモーツァルトには「なんちゃって」精神というようなものがあったと思う。まじめな話を真剣にした後で、「なんちゃって」と付け加えてしまうようなサービス精神のようなものである。この本は第2章以降、音楽家はシューマン,ショパン,ワーグナー,ラヴェルと続き、文学者はホフマン,ハイネ,ボードレール,ポー,ランボーと続くが、読み解くキイ・ワードはロマン主義だろう。反ロマン主義、非ロマン主義も含めて。第1章はその展開にふさわしい序章だった。