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音を視る、時を聴く哲学講義 (ちくま学芸文庫)
 
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音を視る、時を聴く哲学講義 (ちくま学芸文庫) [文庫]

大森 荘蔵 , 坂本 龍一
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

イメージは頭にあるのだろうか、それとも身体が感じるのだろうか、そして言葉はそれとどのようにかかわるのか。人は時間を、そして音をどのように知覚するのか、あるいは、それは客観的に計測できるのか。哲学や諸科学がさまざまに論じてきたこれらの問いに正しい「表現」を与えるべく、世界的ミュージシャン・坂本龍一の問いかけに、時間と感覚について独自の思考を展開させてきた哲学者・大森荘蔵が応える先鋭的な哲学講義録。1980年代の傑作対話がここに。

登録情報

  • 文庫: 259ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2007/04)
  • ISBN-10: 4480090541
  • ISBN-13: 978-4480090546
  • 発売日: 2007/04
  • 商品の寸法: 14.4 x 10.4 x 0.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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By 空満
形式:文庫
 大森氏は、哲学をやるというのは一種の病気であり、緑野に枯れ草を食らうことにたとえる。考えなくても済むこと、むしろ考えることが日常生活に支障さえきたすに関わらず、考えずにおれないという病にとりつかれた人が哲学者なのである。しかし、誰の中にも哲学者の素質は1,2%あるという。この本を読んで少しでも面白いと感じるものがあったなら、自分の中の1,2%の哲学者が目覚めたということだろうか。

 本書にもいわゆる専門用語はいくつか登場する。特に坂本氏の発言にある音、音楽に関する用語は私にはまったく理解できず、したがってそれに絡む対話部分は読み飛ばすしかなかったが、それ以外についてはおおむね平易な日常語で語られる。術語や学史的用語が出てきても脇役的な位置づけである。

 メインは、本書の大半を占める大森氏が日常語で哲学するくだりである。〈今〉〈知覚〉〈イメージ〉〈意志〉〈私〉といったテーマで、氏が語る内容は既成観念をことごとくはずす捉え方を提示する。それは慣れ親しんだ考え方または感じ方とは異なるから、わかりにくいし、私もわかったと言える自信はないが、それでも「へえ、なるほど、すごい」と思える瞬間がある。「表現によって立ち現れてくる事態」、しかも全く予想もしなかった事態に向き合うのである。それが専門語ではなく、日常普段の言葉で行われる。

 哲学した結果を読むのではなく、哲学のライブに立ち会う感覚をもって読み進んでいける。〈今〉というのが点や断面ではなく、幅のある〈今頃〉という言葉に置き換えられる。喩えをもって説明が重ねられる。しかし次には喩えが不適切だとされ、他の説明が続く。しかしそれも十分ではないとされ、別の表現が試みられる。〈今〉という事態の端的な表現を求めて模索するその過程を通して、読者は哲学者とともに〈今〉なるものへ接近していく。正解にたどり着けないとしても、このスリリングな体験を共有した読者は、従来と異なる相の〈今〉が見えてくるはずである。
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9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
今読むとかなり面白い。つまり、脳のシステムに関する研究も進んでいなく、「共感覚」という現象もまだ取り沙汰されてなかった時代に出された本だけれども、哲学と音楽という立場からすでに、そういったテーマを先取っていたんですね。

私事で恐縮ですが、友だちから、中沢新一&細野晴臣によるちくま文庫の『観光―日本霊地巡礼』とともにプレゼントされて読みました。YMOの両ブレーン(ごめんなさい、幸宏さん、あくまでロジックという意味です)のキャラの違いが浮かび上がって興味深かった。でも、『観光』と対になるのは、村上龍&坂本龍一の『EV.Cafe』かと思っていたけど、本質的には、この『哲学講義』なんだろうな、と改めて実感しました。っていつの時代の話でしょうか?
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By トップ500レビュアー
形式:文庫
坂本龍一といういい聞き手を得て「時間と存在」にはなかった無脳論の具体的組み立てが詳細に語られていて驚き、享受し、腑に落ちた。
以下、列挙する。
.現在信仰あるいは知覚信仰のため意識により知覚されるもの以外は存在しないことになっている。過去・現在・未来も強く信じられていて両者は結びついている。
そこに、「イメージ」という言葉(物理学が排除した形容詞の全てを背負う)が要請されるのであろう。
しかし、これは我・意識・心とダイレクトに結びつく倒錯した世界像である。
存在は、頭の中にあるのではない。空間の中に実物がある。そして、時間的には現在もあり、過去もあり、未来もあるということである。ただし、現在以外は「知覚様式」で知覚不可能な「立ち現われ」である。
現在只今(過去と未来を含んだある時間の拡がり・厚み)において、四次元の「立ち現われ」が常時現われている。
正法眼蔵「有時」の巻の存在、時間についての個所はそういうことをいっているのだととる。

.視覚について脳生理学は因果関係で説明するが、それと逆方向でわれわれは見透している。(透視関係)
遠い星はものすごい距離を透視して見ている。意識は不要である。透かして「ただ、見えている」。「立ち現われ」る。
聴覚についても、意識は不要である。「鳴り現われ」る。
われわれは、「現在只今」の中で時間の厚みを見、そして聴いている。

.感動というものは、タブローに張り付いている。「立ち現われ」る。のであって頭の中にあるのではない。感情は決して内心のものではないし私を含む世界のある相貌と私の肉体の状態全体をいう。
記憶についても、想いだすのは実物でなければいけない。「思い出し様式」で「立ち現われ」る。
未来も、「見込み様式」で「立ち現われ」る。

.<私>はいない。身の回りに様々なものが「立ち現われ」ている。この状況のすべてが生きているということそのものである。
この中に主客を入れ込む必要はない。包括的な全体、それでピリオド。それで十分。踏み込まない。けっして私は消えたわけではないのだから。
仏教思想は、一段踏み込む。主客対立が鮮やかに出すぎるために悟りの世界に入ろうとする。
西洋哲学は、主客対立を剥き出しにする。
以上。

鐘消えて 花の香は撞く 夕べかな    芭蕉
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