前著『リスニングオーディオ攻略本』はオーディオの使いこなしが中心的内容でしたが、今回は西野氏がマーカス・ミラーらミュージシャンや、マシュマロレコード主催者上不三雄、マスタリングエンジニアの小泉由香といった音楽関係者に、愛聴盤についてインタビューしていくという趣向です。ですから「名演奏・名録音」がつぎつぎと登場します。
ドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』などは何人もの人が愛聴盤にあげていて、「これはやっぱり定番だよね」と納得させられたり、「こんなアルバムがあったんだ」と、探してポチっと購入したくなったり、「カシオペアはハービー・メイソンにグルーヴ感の出し方を教わった」「アンソニー・ジャクソンは実はクラシック好き」といった「へえ」なエピソードが満載だったり、おまけに前著でも添付CDで演奏されていた「Flow」が今回はライブ版で聴けたりと、1冊で何通りにもおいしい、お得感たっぷりの本になっています。
とくに心に残ったのは、小泉氏との対談で出てくる「音楽愛」という言葉です。大きく派手に聞こえればとコンプレッサーをかける。経費節減のために、スタジオで集まって録音するのでなく、ばらばらにコンピュータ録音したデータを使う。そういう状況が、結局は、「音楽なんて圧縮されたデータをダウンロードして聴けばいい」という風潮を促進し、CDの売り上げ不振を招いているのではないでしょうか。それに対して、ここに登場する「音の名匠」たちはまさに、音楽を愛し、音楽の生み出すマジックを伝えようとしている人たちなのです。
いい音楽をいい音で聴きたい気持ちが高まってくる1冊です。