『鞭打ちの文化史』と銘打ってはいるが、赴きとしてはサディズム・マゾヒズム論考といった方が近いかもしれない。
また、論考のあいまあいまに当時のSM風俗のルポルタージュが差し挟まれているのだが、ここらの語り口調の熱っぽさは好き嫌いが別れるところだろう。
そもそもはSMスナイパーでの連載を纏めたものらしいが、全体的にやや散漫な印象は拭えず、正直な感想としては物足りなさを感じた。
タイトルで大風呂敷を広げている割には、その歴史追跡もルネサンス期で筆が途切れてしまっており、近代以降の鞭打ち文化に関する記述が著しく乏しい。その点については解説人がもっともらしいエクスキューズを与えてはいたが、やはり19世紀英独の教育現場における鞭打ちや、現代フェティッシュの領域にももっと筆を伸ばして欲しかったというのが正直なところだろう。
とはいえ、鞭打ちに特化した研究書などそうあるわけでもないので、鞭打ちについて知りたいという方に対して、いまのところこれをおいてお薦めできる本もない。
鞭打ちをより精緻に、かつ広範に扱った論文が登場するまでのつなぎ、というのであればそれなりにお薦めできる。