これは名著。万年筆を中心に書かれたオリジナリティ溢れたイラストと、インテリジェンスに充ちた文章が心地よい。
決してオタク的に鞄を偏愛するだけでなく、ハンティング・ワールドの素材に対する苦言(まったくその通りだと感じる)や、プラダの黒くて安っぽいナイロン・バッグがなぜ女性に人気か(たしかに私も理解できなかった)など、心からうなずける考察が満載である。
「でべそ氏」や「ドクターK」など内輪ネタが多いのがちょっと気になるが、「オレはこんなにたくさん鞄を持ってるんだぞ」といった自慢じみた内容でないところがいい。
「私は鞄というものに人間が惹かれてゆくのは、人間が自分の中にポケットを持っていないからだと思う」なんていう哲学的セリフも嫌みではなく、作者のインテリジェンスの高さを物語る。