ロバート・アルトマン風の群像劇。マドリードに暮らす女性主人公たちが人生に満たされない思いを抱きつつ、この映画の中で互いに交錯していきます。
なんといってもナイワ・ニムリの存在感は他の共演陣の中でも群を抜く輝きを見せています。恋人のクンとの別れに際して、中盤までは健気な女性像を見せたかと思うと、エンディングでは力強く前向きなレイレを無理なく演じています。
またマリカルメン役のビッキー・ペーニャもお見事。その入り組んだ家族関係をなんとか歯を食いしばってまとめていこうとする、芯の一本通った中年女性を演じてみせます。
一方でちょっぴり男優陣が頼りなげ。彼らの性癖を知れば、それも無理ないのかもしれませんが、どうも眉目秀麗を優先して配役したのではないかと思うほど、女優陣の前では存在感が希薄です。
イサベルの友人マルティナは夫に虐待されていますが、近年スペインでは女性への家庭内暴力事件が頻発しています。男性から暴力を受けて4~5日に1人の割合で女性が死亡しているというデータもあります。このような社会背景を知って見ると、マルティナが夫に殴られている状況の事の深刻さが理解されようというものです。
つまり「命を賭して」まで彼女が夫との関係をどうしたいと考えていたのか、そのことを考えるとマルティナの物語だけは悲壮感漂うものとして映ります。
邦題には不満あり。靴はこの映画の中で主人公たち全員の偏愛の対象というほどの描かれかたはしていません。スペイン語の現代は「石」といいます。監督の言によれば、人は恋や家族やキャリアといった大きな石を人生の中に置き、その合間を少し小さめの石を並べてつなげていくのだが、最初に小さな石ばかり並べてしまうと大きな石を置く余裕を失ってしまう、ということを指しています。
邦題は見る者を明らかにミスリードしていると思います。