大祖国戦争時代のソビエトを舞台に、バーバ・ヤーガの代理で徴兵された見習い魔女、ワーシェンカとそのお目付け役で筋金入りの共産主義者内務人民委員部(NKVD)のナージャ、二人の美少女を主人公とした非常にマニアックな作品です。
有史以来最大の死者を出したと言われる悲惨な戦争をこんな可愛らしい作品にしてしまって良いのか、と一瞬後ろめたい気が致しますが、軍事とスラヴの伝奇に対する並々ならぬ知識と愛情が感じられる作品は好きな方には堪らないでしょう。
互いの存在を許さないナチス対ボリシェヴィキの殲滅戦とそれに協力したり茶々を入れたりする東欧・西欧の魔女・妖怪・精霊達と言う複雑怪奇な話が読み易く描かれているのにも驚きます。
宗教や迷信を認めないソ連軍が裏では魔女を徴用して居ると言う皮肉と、後退を禁じていたソ連軍の屍累々の戦い、そして陰ではオカルトに傾倒していたナチと言う毒に満ちた話がサラリと描かれているのも後から効いてきます。
同時収録のメカコラム「螺子の囁き」は軍事に拘らない蒸気機関から金星探査機に及ぶこちらもソ連製を中心としたレトロな機械に対するトリビアルなコラムです。
小さな手書き文字が少々年長の読者には読み難い向きは有りますが、実に興味深いです。
本作が連載されていたCOMICリュウ誌は既に連載終了ながらナチの研究機関とクトゥルー神話を掛け合わせた西川魯介氏のオカルト・軍隊コメディ『ヴンダーカンマ―』と言うこれまたマニアックな作品も掲載されており、非常に面白いと思いつつも偏った内容に心配していたのですが、現在休刊中。2012年3月の再刊が待ち遠しいです。
休刊後、WEBで発表された第10話と作者の解説・あとがきも収録されています。
ソ連・スラヴ伝奇・大祖国戦争をテーマにした可愛い絵に拒絶反応が無い方には大いにお薦めの頁数に似合わぬ濃密な単行本です。