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革新幻想の戦後史
 
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革新幻想の戦後史 [単行本]

竹内 洋
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商品の説明

内容紹介

左翼的でなければ相手にしてもらえない雰囲気は、戦後、どのように形成され変質したのか。渦中を見てきた社会学者が自分史として綴る

登録情報

  • 単行本: 546ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2011/10/22)
  • ISBN-10: 4120043002
  • ISBN-13: 978-4120043000
  • 発売日: 2011/10/22
  • 商品の寸法: 20 x 14.2 x 3.9 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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類稀な戦後思想史だ。戦後の論壇、アカデミズム、教育界を覆ってきた左翼思想的なバイアスを論考の対象にしているのだが、著者自身の思索・思想の遍歴と重ね合わせながら展開している点に惹かれる。

著者は1942年生まれ、京大を卒業して一時ビジネスに就職したが、大学に戻り、社会学を専門にした教授になった。 人生も終盤に差し掛かった著者が自身の思想的な遍歴を総括する意味も込めて書かれている。

著者自身が学生時代には、当時の大学、知識人(あるいはその予備軍としての大学生)の思想的雰囲気を反映して、左翼的な思潮に染まるが、やがて懐疑、再考→「革新幻想から覚醒」のプロセスを歩む。

私は著者より一世代若いので大学生時代は1975-79年であり、既に時代は左翼的思潮の後退、衰退期に入っていたが、私自身は左派的な思潮に染まったほとんど最後のグループだったと思う。既存の大人社会をそのまますんなりと肯定的に受け入れることができない若者の常として(常だよね?)、既存の体制をラディカルに批判する体系としては、マルクス主義を軸にしたものしか同時なかったので、自然と傾倒したのだ。だから私はマルクス経済学を中心に左派の文献をかなりマジに勉強した。

そのため著者自身の思想的な遍歴は、私自身にも共通する部分があるので、共感著しい。著者が学生時代に読んだ代表的な文献も私自身の読書経験と重なる部分が多い。

1章は佐渡島での北兄弟(兄、北一輝)の話からやや冗長にスタートするが、丸山眞男の敗戦後の日本の知識人を支配した「悔恨共同体」情念の指摘に対して、もうひとつの「無念共同体」の情念があったことを語るあたりから一気に面白くなる。

そして1960年代の高度成長を経て、70年代以降は「花(理念)より団子(実益)」の情念に移行していくことで、悔恨共同体も無念共同体も風化し、理念なき方便が蔓延る戦後日本の曖昧さに至るという総括は、とても納得できる。

社会主義が現実としても理念としても崩壊した今日、昔の左翼は環境問題やフェミニズム、教育などの領域に雌伏していたが、近年は所得格差批判などで少し息を吹き返している感もある。
そうした最近の事情も念頭に、戦後の左翼思潮を再考する有益な一冊だ。
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39 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
数年前のある日、めずらしく見知らぬ人から電話がかかってきた。竹内洋氏からである。不勉強な私は寡聞にして氏のことを知らなかった。教育関係の著作はたいてい胡散臭くて遠ざけていたこともあるが、その私に話を聞かせてくれとのことだった。教育界から追放同然の報いを受けていたにもかかわらずその因となった件での取材だった。30年ほど前に書いた私のある著作についてである。完全に無視され反古同然の書に教育関係者から注目されるのはこれが初めてだった(家永三郎さんなど歴史学者からは少し評価されたが)から驚いた。質問には正直にありのままを(少し控えめに)答えた。塵芥扱いの私の一冊の著書を拾い上げた竹内氏はよほど度量のある御仁か教育界の実態を知らない無謀な選択と思ったが氏のこの著作全体を読んで納得した。氏の持つ確かな歴史観が全体を包み込んでいて説得力のあるものになっている。現在の“革新政党”や日教組は一時誇っていた勢力は失っているが教育界では相変わらず組織的な潜在力を行使して組織の温存を図っていることを忘れてはならないだろう。なにしろ私の相手はこうした連中だったのだから。その一角に切り込んでもいる本書を著した氏の姿勢を誇りに思いたい。私は仕事で他人を羨ましく思ったことはないが書きたいことを自由に書いたり発表できる力量には感心もし羨望の念をも禁じ得ない。余計なことだが私の机の引き出しは未発表の原稿が何冊分も眠ったままだ。ともあれ、氏の今後の仕事にも注目し期待したい。
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53 人中、39人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
まず、私は著者の一連の研究・著書を非常に評価している。
なぜならば、教育の持つ功罪を客観的に研究・分析している一方で、ユーモアあふれる文体がところどころに見られる。

本作は著者の体験が大きくベースになっている。同様に私も戦後日本の左翼について非常に懐疑的で、彼らは深い思想があったのではなく、単なる流行を追いかけていたにすぎず、その意味ではオピニオンリーダーではなく、トレンドセッター、ファッションリーダーに過ぎなかったと見ている。
彼らは大学や論壇と言う限られた温室の中で「反体制」を気取っていただけであり、その方が商売になったからである。その顧客は若者であった。
しかし、通信技術の発達や情報化社会は、そのビジネスモデルを崩壊させた。

私にも個人的体験がある。
私の両親は「社会党支持者の方が自民党支持者よりも教養がある」と素直に信じていた。革新自治体を手放しで称賛していた。
私が大学1年の時に中国で天安門事件が起きた。退官をその年に控えた教授が「人民解放軍が民衆を弾圧するなんて、『僕は今まで社会主義に理想を見ていたが、誤りだった』」と肩を落として嘆いていた。

左翼が革新勢力ではないことは現実社会に生きている人ならすぐにわかる。左翼は実は現状維持なのである。現状に不満を言うだけで満足なのである。現在の社会の基本的な枠組みを肯定して、その理念の維持のために改革を怠らない保守主義者とは明らかに違う人種である。現在の社会の枠組みを否定していながら、その社会から利益を得ている既得権益層である。日本では大学教授などの知識人と公務員などの労組がその典型である。本気で社会を変えようなどとは思っていない。最初から慣れ合いで、出来レースの議論をしているだけである。何とも日本的な光景である。

著者は、過去に日英の教育制度・教育が社会階層に与える影響などを研究してきたが、その中で日本の教育の「地に足がついていない」部分や現実離れしている部分など病理を見て、それが日本の教育制度が作り出した知識人の特性であるという問題意識になったのだろう。

かつて左翼はかっこよかった。流行の先端を行っていたからだ。保守派の言論はバカにされた。しかし、今や左翼は時代遅れになった。理念があせたのではない。ファッションとして「ダサくなった」のである。

一方、保守もそんな立派なものではない。日本では結局政治は揚げ足取りに終始する「ファストファッション化」した。もっともGAPやユニクロ、H&Mのようにグローバル化し、世界中同じようなものだが。

著者より年齢的に同世代の私の両親は左翼→ファストファッション化した政治ショーの愛好家となった。

著者の研究・問題意識を受け継いで次代につなぐ研究者が現れてほしい。
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