車田氏の本が出版されてから35年も経ち、最近まで世間からも忘れられていた日活の創始者、梅屋庄吉のひ孫にあたる方の出版である。
歴史教育がおろそかになった日本では、辛亥革命や孫文といった名前も知らない世代がほとんどだが、第二次大戦前までは中国の民主化こそアジアの独立と平和を成し遂げるための、なによりの方法であると信じていた日本人は少なくなかった。その中でも当時は大陸浪人としてしか一般には評価が無かった梅屋だが、その辛亥革命にもっとも資金を提供し、日本人、中国人を問わず、困った人への積極的な援助を惜しまなかった、極めて稀な存在である。
ただ一度、孫文との初めての出会いで、革命の全面的支援を口約束で通し続け、その信条と義を守り抜いた。
とかく現代人は、長いものやビッグネーム、目先の金には弱いものだが、梅屋の生き方は一度口にした約束は守る、助けると決めた相手は裏切らないという昔かたぎのものだった。
埋もれた歴史と共に、ぜひ現代の人にも、こういった人間としてのまっさらな精神を見習ってほしい。