書名どおり毒と薬の解説書だが、薬よりは毒の方にやや比重が高いかと思われる。章構成は大きく分けて5つ。
1:毒と薬とその歴史、2:快楽と人殺しに使った天然毒、3:創薬の歴史とそのメカニズム、4:薬の多様化・多面化と創薬の未来、5:危険! 人を滅ぼす毒
古来から現在に至るまで毒と薬は紙一重というか、毒を薬として用いることもあればその逆もあるので、両方纏めて解説してくれる本の存在はありがたい。
「1:毒と薬とその歴史」では世界の各地で毒がどのように発見され、また想像され、創造され、用いられてきたかの歴史を紐解く。日本、中国、インド、それに広くヨーロッパと様々な国でのエピソードを取り上げていて面白いが、あまりいかがわしいような話には触れていない。いや触れられてはいるがアッサリめである。血なまぐさい暗殺劇や迷信や妄想から産まれた毒の類について詳しく知りたいなら、「毒薬の博物誌」(青弓社)あたりがお勧めだ。
「2:快楽と人殺しに使った天然毒」では自然に存在する毒を、人間がいかに用いてきたかが主題。
「3:創薬の歴史とそのメカニズム」では近代の薬学が中心となり、薬がどうやって作られてきたのかの話となる。
夏目漱石や与謝野晶子らが苦しんだ病とその薬の歴史などのエピソードや、歴史に名を残す医学者たちが薬を発見してきた経緯など。「何で効くのか」といった仕組みの部分にも簡単に触れている。
「4:薬の多様化・多面化と創薬の未来」では現代から未来にかけての薬について触れられている。アルツハイマーやアトピーなど、現段階で開発の進められている薬について他、生活習慣病の予防などについてもこの章で取り扱われている。
「5:危険! 人を滅ぼす毒」では食中毒流行病風土病など、我々の身近にあって危険な毒の他、人為的に用いられる毒についても記述が多い。オウム真理教の引き起こした毒ガス事件についても記事があるが、事件の詳しい概要等では専門の書籍をあたった方が良いだろう。目を引くのはオウム事件当時の筆者の体験について語られている部分。
他、巻末近くには麻薬についても説明がある。
毒薬にまつわる迷信、実在しない毒、或いは歴史の中の毒殺犯など、その類の情報を求めている人は他の書籍に詳しいものがあるが、この本はバランス良く毒物について触れており、読み物としても充分に楽しめる作品となっている。