この物語は、台南空の搭乗員が輸送船の暑苦しい船倉に耐えながらラバウルへ向かっているシーンから始まります。坂井三郎氏の著書「大空のサムライ」にも記されているが、発熱に苦しむ坂井三郎一飛曹を親身に看病した、笹井醇一中尉がこの物語の主役だ。
坂井三郎氏、吉田一氏らの著書、雑誌「丸」の掲載文をもとに彼の生い立ちや人格、手紙などを今に伝える貴重な資料となるであろう。酒を飲むと、しばしば海軍の俗語にいう「イモ掘り」ですべてをメチャメチャに壊した彼の心の内を少し理解できた気がした。
笹井中尉は、海兵出の士官搭乗員にもかかわらず、グレートエースとなった稀有の人物である。無論、部下であり親友でもあった坂井の薫陶を受けて空戦技量を高めていったのは言うまでも無いが、天性の素質も十分に兼ね備えていた人物のようだ。
「大空のサムライ」では、彼の最後についての詳細はない。坂井三郎氏がすでに内地帰還してからの出来事であったからである。よって笹井中尉の壮烈なる最後(戦死後全軍布告二階級特進:少佐)の模様を知りたい方には特におすすめです。
若干「大空のサムライ」の受け売り的な印象も受けますが、全体的に良くまとまっていて貴重な資料となるでしょう。
猛烈な下痢に悩まされながらも出撃し、不覚にも敵機に撃墜されてしまった宮崎儀太郎飛曹長の最期をはじめ、河合四郎大尉、高塚寅一飛曹長、大木芳男一飛曹、太田敏夫一飛曹、羽籐一志三飛曹などなど、泣く子も黙る一騎当千の搭乗員たちが次々に登場し、その各人の生い立ち、人格や技量、そしてその最後の模様などを深く掘り下げて書かれており、非情に興味深かったです。
世界最強と謳われた航空隊での伝説の数々を是非読んで頂きたい。