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池澤夏樹の描く宗形兄弟の生き様から、またはアイヌの神謡等々から、つまり、この小説から、私たちは何を感じ取るか。自然とのつきあい方を考えるも良し、北海道の自然の陰陽を知るも良し、日本の近代を見直すも良し、21世紀中葉を想うも良し、・・・。すぐれた文学作品がそうであるように、読者それぞれの読み方ができる。そして私は読み終わった時、「静かな大地」は北海道の物語ではなく「日本人」の物語だ、と思った。
南を中心に作品世界を広げてきた作者が、珍しく北を舞台にした。物語の中心人物三郎の最後も、作者がこれまであまり選ばなかった(あえて言えば小説ではよく書かれる)パタンだ。作者が今回はそういう結末として描いた、そこに大きな意味があると思われる。山、川、火、星、動物たち、そしてアイヌの人々とともにあった神々。人々の知恵、その道具と細工。バランスを欠いた文明の力への厳しい眼差し。池澤文学を一貫して流れる細やかな筆致と批評精神を読者はここでも受け取ることができる。
全体を覆う雲は厚く暗い。三郎と妻雪乃(エカリアン)のなれそめと婚礼、小ユートピア的牧場村での明るくかぐわしい日々を振り返るとき、なおさらに懐かしく色鮮やかに思う。
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