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静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)
 
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静かな大地 (朝日文庫 い 38-5) [文庫]

池澤 夏樹
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商品の説明

内容紹介

短い繁栄の後で没落した先祖たちのことを小説にするのは、彼らの物語を聞いて育ったぼくの夢だった--明治初年、淡路島から北海道の静内に入植した宗形三郎と四郎。牧場を開いた宗形兄弟と、アイヌの人々の努力と敗退をえがく壮大な叙事詩。著者自身の先祖の物語であり、同時に日本の近代が捨てた価値観を複眼でみつめる、構想10年の歴史小説。第3回親鸞賞受賞作。〔解説・高橋源一郎〕

内容(「BOOK」データベースより)

明治初年、淡路島から北海道の静内に入植した宗形三郎と四郎。牧場を開いた宗形兄弟と、アイヌの人々の努力と敗退、繁栄と没落をえがく壮大な叙事詩。著者自身の先祖の物語であり、同時に日本の近代が捨てた価値観を複眼でみつめる、構想10年の歴史小説。第3回親鸞賞受賞作。

登録情報

  • 文庫: 672ページ
  • 出版社: 朝日新聞社 (2007/6/7)
  • ISBN-10: 4022644001
  • ISBN-13: 978-4022644008
  • 発売日: 2007/6/7
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.8 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (25件のカスタマーレビュー)
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By bemsha
形式:単行本
作者にとって「集大成」的な小説と言えるだろう。

ここには、作者の母方の家系に伝わる物語をいつか書きたかった

という個人的な強い思いが込められているばかりでなく、文学的

な野心も感じられる。父が娘に語る話し言葉、手紙、昔話、第三

者の証言など、章によって文体が変わる。これはさまざまな視点

から歴史を伝え、小説の中に立体的な効果を生み出すだけでなく、

作者が京都大学文学部で行った講義で紹介したジェームズ・ジョ

イスの『ユ リシーズ』へのオマージュとしても読みとれる。

[『世界文学を読みほどく−スタンダールからピンチョンまで』

(2005年)189頁を参照]。

さらに、勝者の言葉でではなく、敗者の、失われた言葉を拾いな

がら歴史を語ろうという姿勢から、『楽しい終末』(1993年)に

おいて考察の形で留まったまま一旦筆を置いた問題に、今度は実

践的に取り組んでいることが窺える。また『ハワイイ紀行』

(1996年)でも触れ、そして作者の友人で、数多くの名著を残し

た写真家の故・星野道夫がアラスカやカナダのイヌイットの歴史

と現在の暮らしを通じてわれわれに伝えた、先住民が地理的、社

会的、政治的、経済的にも追いやられる歴史の過程も、本書の中

で丁寧かつ冷静に、真摯に描かれている。

ある民族の歴史の一部分を再構築するというスケールの大きな物

語の中に、夫婦の馴れ初めなどの微笑ましいエピソードもあり

(しかも登場する女性たちがとても魅力的で輝いている)、実は

すんなりと親しめる作品である。もともとは新聞小説だったから、

読みやすいように書かれているということもあるのだろう。

そういうこともあってか、600頁以上という、長編の中でもしっ

かり長い方に入る作品であるにもかかわらず、あまりに面白いが

ゆえに12日間で読み終わってしまった。

読みながらも、そして読み終えたあとも、出会えたことが本当に

嬉しくなる小説である。
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14 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
「静かな大地」は北海道の物語であって、静内という一地方の物語ではない、と読みながら思った。アイヌはカムイを想いつつ自然界と一体になって暮らしてきた。そこに和人が、北の防備と土地・資源の開発を旗印に、松前藩の支配を幾何級数的に強化して人と資金を注ぎ込み、侵食してきた。そこでは大自然を舞台にした宗形一家とオシアンクルたちのたどった歴史のドラマが多彩な筋書きで数世代にわたって何万例も繰り広げられた。そうした数え切れないほどのドラマのなかでも優れてドラマチックな物語・・・それが「静かな大地」である。

 池澤夏樹の描く宗形兄弟の生き様から、またはアイヌの神謡等々から、つまり、この小説から、私たちは何を感じ取るか。自然とのつきあい方を考えるも良し、北海道の自然の陰陽を知るも良し、日本の近代を見直すも良し、21世紀中葉を想うも良し、・・・。すぐれた文学作品がそうであるように、読者それぞれの読み方ができる。そして私は読み終わった時、「静かな大地」は北海道の物語ではなく「日本人」の物語だ、と思った。

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16 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本|Amazonが確認した購入
嘆きの歌に満ちた、痛ましい小説である。「いま語っておかなければ消えてしまう」と何度か作中の人物が繰り返すとおり、作者も、この北の大地を拓いた人々と、アイヌの人々とについて、いかなる変遷があり、いかなる血と涙が流れたのか、それを克明に書き残しておきたかったのだと感じた。気高いという言葉にじゅうぶん値する、アイヌの人々の暮らしと文化を一方的に踏みにじり、利用し、破壊した「和人」たち。その末裔として、いまのわたしたちがいる。たくさんの声、声、声。子どもたち、老人たち。悲しみもあれば喜びもある。そのひとつひとつを慈しみ、味わいたい。

南を中心に作品世界を広げてきた作者が、珍しく北を舞台にした。物語の中心人物三郎の最後も、作者がこれまであまり選ばなかった(あえて言えば小説ではよく書かれる)パタンだ。作者が今回はそういう結末として描いた、そこに大きな意味があると思われる。山、川、火、星、動物たち、そしてアイヌの人々とともにあった神々。人々の知恵、その道具と細工。バランスを欠いた文明の力への厳しい眼差し。池澤文学を一貫して流れる細やかな筆致と批評精神を読者はここでも受け取ることができる。

全体を覆う雲は厚く暗い。三郎と妻雪乃(エカリアン)のなれそめと婚礼、小ユートピア的牧場村での明るくかぐわしい日々を振り返るとき、なおさらに懐かしく色鮮やかに思う。

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