静かなリーダーとはどういう人か。それは「忍耐強くて慎重で、段階を経て行動する人、犠牲を出さずに、自分の組織、周りの人々、自分自身にとって正しいと思われることを、目立たずに実践している人」である。自分の価値観に基づいて生きながら、自分のキャリアや評判を危険にさらすことなく、難しい問題を引き受ける人。身の周りに沢山いそうな、そういう人である。
ヒーローは他人のために自ら進んで犠牲になる人だが、静かなリーダーはそうではない。自分にも気を配り自分の地位を守ろうとする、健全な利己主義の人である。本書では、ヒーローモデルが全面否定されているわけではない。けれども、世界を動かし変革するのは、実は静かなリーダーであると著者は信じているのであり、その信念が本書の説得力にもつながっている。
著者は、ハーバード・ビジネススクールの教師である。事例をベースとし、多種多様な意見をまとめていく立論を読むと、教室での議論の成果が本書に生かされていることがわかる。本書の最大の特徴は、従来のリーダーシップ論とはまったく異なるリーダー像を打ち出している点である。静かなリーダーという着想がまずおもしろい。また、事例に基づく議論が説得的で、考察が深く、知的である。経営書には、妙に明るい共通の匂いがあるように思われる。男っぽい、野蛮な、体育会系とでも呼ぶべきにおいである。そういうにおいと違う本に久し振りに出合ったという感想を持った。議論が騒がしくなく、静かなのだ。
ただし、本書が主として対象としているのは、大規模組織の文字通りのトップではなく、むしろミドルだろう。組織の中でミドルはいかに生きていくべきか。組織内の日常的な問題解決に示唆するところの多い本である。(榊原清則)
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23 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
感動的な事例、具体的な方法論、粗雑な翻訳・監修,
By metanoia (東京都中央区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 静かなリーダーシップ (Harvard business school press) (単行本)
邦訳は、全般的に丁寧だし、読みやすく感じられます。しかし、査読や監修が十分に為されておらず、些細な点で不安を感じさせることがいかにも残念です。同書の中で使われている「インサイダー」「アウトサイダー」などの言葉の翻訳に統一がなく、ところによって「部外者」などと訳されたりして、意味を取りにくくしています。Ross Perotをロス・ペロット、Tylenolをタイルノールなどと誤記するのは、ごく簡単なチェックを入れれば防げるはず。それどころか、本の冒頭の「本書を推薦する言葉」で、「バラダッコの洞察力」「バラダッコの深い考察」「バラダッコのリーダー像」と、いきなり連続で本の著者の名前を誤記するのは、編集者がチェックを怠っているとしか思えません。感動的な逸話と具体的な方法論が記述された素晴らしい本なのに、信頼感を失わせるミスは非常に残念です。
49 人中、44人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ノウハウ本にこだわるのはもうやめましょう,
By
レビュー対象商品: 静かなリーダーシップ (Harvard business school press) (単行本)
本を選ぶ時タイトルの占める重要度は非常に高い。この観点からは「静かなリーダーシップ」というタイトルに惹かれる方は少ないだろう。リーダーシップについてのノウハウ本の方がわかり易そうだ。ただ、この本には歴史的な我々の既存の価値観を覆す内容が記されている。 それは何らかの問題解決が必要になった時、解決までのプロセスで重要な役割を果たすのは偉大なリーダーの迅速な意思決定ではなく、地味でかつ現実を直視した静かなリーダーだということである。この静かなリーダーというのは、歴史上の英傑など私たちがイメージするリーダーとは程遠い。 みなさんの周りにもいるのではないか。口だけで目立ちたがりやの表面上のリーダーの下で、地味にこつこつと成果を発揮しているようなリーダーが。
14 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ミドル層向けのリ−ダ−像,
By 南河内太郎 (大阪・富田林) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 静かなリーダーシップ (Harvard business school press) (単行本)
■ここで描かれる“静かなリ−ダ−”とは、現場とトップの狭間に置かれ、 組織人としての目標と個人としての目標との間で意思決定しなければならない管理者、 とりわけミドル層に向けて貴重な示唆を与えるものといえるでしょう。 決して世間から脚光をあびるヒ−ロ−型のリ−ダ−ではありません。 ■“静かなリ−ダ−”は三つの特徴を備えていると指摘しています。 ・周りを見回し、人の言葉に耳を傾けて学ぶ<自制> ・自分が世界を変革しているとは考えない<謙遜> ・個人的な倫理観、感情、切迫感がもたらす<粘り強さ> ■こうして描かれるリ−ダ−像は、解説のコメントにもあるように、 周りの状況をよく理解し、ネットワ-クを幅広く有した中で利害調整を円滑に行うことのできる 日本型のリ-ダ-にあてはまり、加えて日常生活や人生の意思決定場面でも有効であると 感じました。 来る日も来る日も、無数の目に見えない小さな努力を続け、 今日も組織、社会、世界を向上させている“静かなリ−ダ−”。 そんな存在に、いつか自分もなりたいと思わせるキラリと光る一冊です。
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