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靖国 (新潮文庫)
 
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靖国 (新潮文庫) [文庫]

坪内 祐三
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (12件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

「軍国主義の象徴」か、あるいは「英霊の瞑る聖地」か。八月がくるたびに、閣僚の公式参拝の是非が論じられる靖国神社。しかし、そもそも靖国は、建立当初はどのような貌をした場所だったのか―イデオロギーにまみれ、リアルな場として語られることのなかった空間の意外な姿を膨大な史料を駆使して再現し、近代化を経て現在に引き継がれる、日本人の精神性を発見する痛快な評論。

内容(「MARC」データベースより)

靖国神社。それはかつては「文明開化」の東京に出現した、超モダンでハイカラな空間だった。興味深いエピソードを積み重ねつつ、明治から平成に至る時代の東京の雰囲気を鮮やかに伝える。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 349ページ
  • 出版社: 新潮社 (2001/07)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4101226318
  • ISBN-13: 978-4101226316
  • 発売日: 2001/07
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (12件のカスタマーレビュー)
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By それから トップ1000レビュアー
形式:単行本
中学生の頃、神保町の本屋街に行き、たまたま九段のほうに向かったところ坂の右手上に大きな鳥居が見えた。これが、靖国神社の初めての経験である。当時は、学校でも家庭でも靖国神社が話題にのぼることなどなかった。境内に古い大きな大砲、砲弾が転がっていた記憶がある。

本書で、そのとき見た大鳥居は戦時中に建てられた木製の鳥居であったことを知った。

靖国神社の歴史は浅い。著者は英国のE.ホブズボウムの「伝統的と思われている物の多くが、実は近代になって新たに人工的に作り出されたものである」を引き、いつのまにかその起源があいまいとなり、神話的世界と結びつくという。その通りと思う。そして靖国神社はすっかり、江戸から東京となった都会の一風景となった。坪内逍遥、夏目漱石などの文学作品の舞台ともなる。先日、訪れたところ子供連れの若い人たちも多く、伝統の確立は疑いもない。

本書は時代考証も優れ、靖国神社だけでなく、明治以降の東京の風景の変遷を知る上でも貴重な資料である。著者は、靖国神社と縁の深い場所にある武道館にボブ・ディランを聞きにいったという若い世代であるが、この労作に敬意を表したい。是非、イデオロギーに囚われずに大勢に読んでもらいたい本である。
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By 青ち
形式:文庫
この本の位置づけは、高橋哲哉『靖国問題』と対比させるとわかりやすいだろう。

高橋は、靖国という「問題」に焦点を当て、その思想的・哲学的問題性を読み解こうとする。それに対して坪内は、靖国という「空間」に焦点を当て、そのモダンでハイカラな祝祭空間としての意味を読み込もうとする。同じ「靖国」を題材としつつも、その焦点はまったく違ったところに当てられている。両者は対立的であるよりもむしろ、「靖国」の持つ多面的な近代性をそれぞれの視点から論じているという意味において、相補的である。

この坪内『靖国』がアカデミズムの場で無視されている現状を、大阪大学の川村邦光氏がある場所で指摘しているが、それは「靖国の空間的モダニズム」を論じた本書のような論考が今までになかったことに由来するのではないだろうか。

管見の限りではあるが、今のところ類書はない。パイオニア的な良書である。

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25 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 この著書は「靖国神社」をテーマにしながら、現在の「靖国問題」からは遠い地平にある稀有で貴重な本である。右であれ左であれ、この本をイデオロギー的に読むことは不毛でしかない。
 この本には、空間としての重層的な可能性を秘めていた「靖国」が、明治、大正、昭和と時代を経るごとにその広がりを縮小し、イデオロギー的な記号に回収していったことへの深い憤りと悲しみが感じられる。そしてもはや人々が忘れてしまった「靖国」の意味と、あり得たかもしれない未来の姿を、丁寧に、慈しみながら、掘り起こしていく。
 
 本の導入部で、著者はイギリスの歴史家エリック・ホブズボウムの次の言葉を引いている。「伝統的と思われている物の多くが、実は近代になって新たに人工的に創り出された物である」。
 靖国神社が、幕末の勤皇の志士たちの霊を弔慰する目的で明治になってから作られた招魂場であることを、どれくらいの人が知っているだろうか。そして、そうした宗教的、政治的、軍事的な部分から切断されたところで、いかに豊かな空間であったかを。そこには近代日本初の記念銅像や西欧建築が建てられ、競馬がサーカスが相撲が、そしてプロレスが催された。近辺にはデパートの前身とも言える観工場やモダンアパートが軒を連ねた時代もあり、戦後すぐにはアミューズメントパーク化計画が練られたことさえあったと言う。
 著者は、“江戸=東京という広大な時空間の中で、これからの未来に向かって、新たな地霊を人工的に仕込ませていくのに最適の空間”だったのではと、靖国の存在を語るのである。

 まったく余談だが、平日の靖国神社のベンチは人影も少なく、会社をさぼって昼寝するには持って来いの場所である。何か懐かしい匂いがし、涼しい風が吹く。この本には、あの心地良い場所の記憶がある。

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