高橋哲哉『靖国問題』・三土修平『頭を冷やすための靖国論』に続き、ちくま新書からまた注目すべき靖国論が登場した。
この本が注目に値するのは、明治維新やそれに端を発する靖国神社の史観がいかなる「歴史」の上に成り立っているのか、という論点を鋭く指摘しているからである。「国体」「英霊」「維新」という3つのキーワードを掲げ、それぞれのルートから、「靖国というモダンな史観」の淵源が儒教や漢学にあることを論じ、その流れの中に記紀や『新論』『大日本史』『神皇正統記』などを位置づけていく。その整理と説明づけの手際は実に鮮やかである。
挑発を含んだ軽みのある文体は、膨大な引き出しから自在にネタを操る著者だからこそなせる、筆の遊びであろう(くれぐれも腹立ち紛れに途中で投げ出さないように…)。
靖国神社を「東アジアの中の日本史」の中に位置づけるという切り口は、モダンな議論に終始しがちであったり、「日本古来の〜」といった言辞に逃げ込みがちであったりする靖国神社をめぐる議論の状況にあって、たいへん興味深く、刺激に満ちた一冊である。