今度映画化された「青空のルーレット」と、第16回太宰治賞を受賞した「多輝子ちゃん」が所収されています。
「青空のルーレット」は、テーマが明確に台詞として出てきます。「夢を見るから、人間なんだっ」「夢を叶える事よりも、夢を見る事で、人間は人間になれるんだっ」と。
窓ふきを世過ぎとしながら、音楽であったり、文学であったり、様々な「夢」を持って生きている若者達がいます。そんな彼らの中に中年になっても「夢」を諦めない萩原さんがいます。彼らは、「夢」が簡単に実現できるとは思っていません。ですから、自分たちの未来として萩原さんを賞賛を持ってみています。それ故に、大人の汚い世界の罠にはまった萩原さんに手を差し伸べようとするのでしょう。
「多輝子ちゃん」は、青春のある一時期の不安定な時期に、彼女の人生を救った一曲の歌を描いています。その曲は、若者の手になるものでしたが、彼はその純粋さ故に大人の世界に対応出来ず、若くして亡くなります。その曲自身も結局レコードにはなりませんでした。でも、そのキャンペーン中に流された曲が、彼女を死から救いました。それが、彼が生を受けた意味であるかのように。
二作品とも、人間の本来持っている純粋さと、大人達の妥協の世界の対立を描いています。誰も最初から大人であったわけではなく、純粋さを持ちあわせていた筈で、その心を忘れたくないものです。