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青梅雨 (新潮文庫)
 
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青梅雨 (新潮文庫) [文庫]

永井 龍男
5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 266ページ
  • 出版社: 新潮社; 改版 (1969/05)
  • ISBN-10: 4101075018
  • ISBN-13: 978-4101075013
  • 発売日: 1969/05
  • 商品の寸法: 15 x 10.4 x 1 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
菊池寛の「小説は人生経験を積んでから書くべき」という言葉どおり、文藝春秋で編集者として身を立て、作家としての地位を築いたのは、終戦後。年齢は40を越えていた。痴呆となった元教師一家を描いた「朝霧」で横光賞を受け、新聞小説で流行にも乗った。昭和30年ごろから短篇にその才能を発揮し、停年サラリーマンの自殺を描いた「一個」、借金を苦に心中を遂げた老一家の当日を描いた「青梅雨」、中流家庭の奥さん達の軽快なかけひきを綴った「しりとりあそび」など、市井の人々の哀歓を書けば、右に出る作家は皆無です。氏は平成二年に亡くなりましたが、白州正子さんが「何もいうことができない程の名文家を私たちは失った」と云うほどの作家の名品が、この一冊に多く収められています。ただ、作家志望!の人は、氏の作品を読むと、自信喪失となりかねません。
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形式:文庫
文庫本の帯には、あおり文句として「人生の断面を彫琢を極めた文章で鮮やかに捉えた珠玉の名編の13編」とある。この「彫琢」という言葉が、永井龍男を読み解くキーワードの一つである。「彫琢」とは、元々宝石などを刻み磨くこと、から転じて詩文の字句に磨きをかけることを意味する。短編小説の名手である永井の文章には、無駄を削ぎ落とした「簡素の美」がある。平易でありふれた表現を用いながらも、精巧に的確に組み立てられた文章には隙がなくて、むしろ緊張感さえ孕んでいる。簡素といっても水墨画のように枯淡の色はなく、独特の霊妙な色彩に彩られている。
作家・陽羅義光は、「永井龍男には、“絶対文感”のようなものがある」と書いているが、果たしてどうだろうか。私は、永井に天賦の文才があるとは思わない。それは、「文芸春秋」で辣腕編集者として作家たちと向き合う中で鍛錬された能力に違いない。言葉の美醜に敏感なのは、作家の文章を削り磨いた編集者の美意識そのものだ。
さらに表題作の『青梅雨』『一個』などに見られるのは、「シンボリズム」であり、永井文学を特徴づけるもう一つの重要な要素だ。読み終わって「はっと」する感覚は、文章に巧みに埋め込まれたシンボルや暗喩の裏に隠された本当の意味に突然気づかされるからで、永井の小説を読む醍醐味になっている。
さて、本作中、私が一番好きな小説は『私の眼』と題された作品。縁のない他人の葬式に参列し、香典袋に靴ベラを包んで、やがてつまみ出される男の一人称で語られる。男は明らかに精神を病んでいる。その男が「精神異常者というものは、自分の頭に疑いを持たない」などと言って滔々と他人を説く。その倒錯にリアリティと毒々しい魅力があって、それをもたらしたのは永井の筆力なのだが、作品に不朽の価値を与えている。面白いのは、連作の『快晴』が、今度はその異常者に参列に来られた、葬儀の主催者の目線で描かれていることだ。そうした試みは、1904年生まれの作者の作品とは思えないほど、新鮮であることに改めて驚く。練りこまれた小説作法は大きな賞賛に値する。
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形式:文庫
早くから才能は開花していましたが、菊池寛の「小説は人生の経験を多く積んでから書かねば駄目だ」という考えを地でいくように、文藝春秋社で、編集者としての生活を始めます。戦後、パージに遭い(すぐ解除)、それを機に文筆一本で身を立てます。痴呆症の老人を持った家庭を描いた「朝霧」が横光利一賞を受け、そこから文人として再評価されます。新聞小説で流行にも乗り、やがて短編作家として、昭和30年代から珠玉の作品を生み出します。ここに収録の作品群は、同氏の短篇全盛期のものばかりです。定年のサラリーマンの自殺がテーマの「一個」、借金苦に心中を果たした当日を描いた「青梅雨」中流家庭の主婦の楽しい駆け引きを描いた「しりとりあそび」など、市井に生きる人々の哀歓を描かせたら、右に出る作家は皆無です。白州正子さんが同氏の死に際して「何もいうことができない程の名文家を私たちは失った」といわしめるほどの作家の名品をここで味わって欲しいです。
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