荒っぽく説明させていただくと、輝かしい冒険の記録と、その費用の捻出や現地の下調べを含む準備の記録が大体交互に出てくるというのがこの本の構成なのであるが、読み進めるうちに「準備の記録」を楽しむ気持ちがどんどん強くなった。
中でもアルプス麓のスキー場で、言葉は拙くとも、スキーは滑れなくとも、懸命に、他のどのスタッフよりも汗を流して働き、やがて現地の人々の共感を得、本当の仲間として迎えられてゆくくだりは、まさに本書のハイライトであり、こういった不器用で、謙虚で、ひたむきな姿こそが永遠に色褪せない著者の魅力の所以であろうと思う。
どんな困難にも、常に裸で立ち向かう彼の姿を思うとき、勝ち負けといった結果ではなく、そこに行くまでの過程こそが大切であるとした生前の著者の言葉が胸を打つ。