著者の作品では、行きずりで知り合った人間に、
偶然にも再会するという筋書きの展開が、頻繁に用いられる。
その最たる作品は「棟居刑事の証明」だろう。
この作品でも、棟居刑事が後立山で偶然ある女性に出会って、
下山して、そのまま住所の交換もせずに新宿で分かれた。
大都会では、今後再会出来る可能性は、ほぼゼロだと思っていた。
しかし、ある事件が膠着状態である時に、偶然が偶然を呼び、
二人が再会する事になり、事件解決のヒントも得る事にもなる。
こんな偶然はほとんどあり得ないが、この偶然が無ければ、
事件の解決も無かったとも言え、この部分に推理小説の醍醐味を感じる。
つまり、そういう部分が不自然ではなく、小説として面白いのだ。
ところで、人生をリセットしたいと思っている方も少なくないと思う。
この作品を読んで、こんな方法があるのかと、感心させられた。
現実には、人生のリセットは至難の業だが、
本作品の中核をなすテーマとして、大変興味をそそられる。