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また、なぜ国語教科書においては、歴史教科書を舞台にして沸騰した歴史の認識もしくは解釈をめぐるような議論が起きないのか不思議だったが、その原因も本書を読めば氷解する。この半世紀余りいわゆる保守的文化人も進歩的文化人もとともに、「青春」に価値を求め、「近代的自我」に悩んだ軌跡を綴った作品でなければ教科書に掲載するのに相応しくないと思いこんだからだろう。本書が明らかにしたように、かつてほとんどの知識人が「青春」という19世紀から20世紀前半に吹き荒れた病に、かぶれていたからである。
「言文一致体の成立によって近代的自我の表出が可能になった」という常識の無意味さを弾劾するあたりも、誠に小気味良く大いに頷くが、本書の白眉は太宰治の評価(をめぐる文学者たちへの評価)だ。著者は「太宰治は落語家だ」「芸人だ」という。貶めているのではない。からかっているのでもない。だから好きな人はとことんのめり込み、嫌いな人は1行も読まずにイメージで批判して怪しまない。つまり、太宰に代表される(とする)我々がぼんやりと抱かされてきた女々しい「青春の文学」のイメージこそ、まさに「青春」は雄々しく、悩み多く、しかし価値あるものという明治以来評論家諸先生がつくり出した幻想の逆説だった。ぜひ再読したい。
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