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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
純一の坂井夫人への思いは?,
By tttabata (大阪府堺市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 青年 (岩波文庫 緑 5-4) (文庫)
田舎から文学を志望して上京した青年小泉純一は、正宗白鳥、夏目漱石、森鴎外自身などをモデルにした作家たちに会い、現代社会を描こうとする自分を見つめる。ある日、有楽座へイブセンの演劇を見に行った純一は、「切れ目の長い黒目がちの目に、有り余る媚がある」坂井未亡人と出会い、彼女に惹かれ始める…。この作品は、漱石の「三四郎」が発表されてから二年後の1910年に書かれたものであり、状況設定や文体にも「三四郎」に似通ったところがある。しかし、純一と坂井夫人の関係は、いまなお若い読者を引きつけてやまない三四郎と美祢子のそれとは異なり、純一自身の日記の形も借りて、自然主義的筆致で冷ややかに描かれる。純一は、坂井夫人との関係についてある決心をするとき、文学作品執筆においても初志を変え、伝説の執筆という新しい方向に向かおうとする。その必然性はいささか分かりにくい。しかし、この作品を出した後、鴎外自身、伝説をもとにした「山椒大夫」等の作品を書き始めたのであり、その背景を示唆している点で、文学史的価値のある作品といえよう。この本を読んだ女性は、自分を好いている男性に、「あなたは、純一が坂井夫人を思うように、私を思っているの?」と尋ねてみるのも一興であろう。男性としては、本書を読まないで、うかつな返事はできない。
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
成長期の心の揺れを描く,
By bluepasta (Brooklyn, NY USA) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 青年 (新潮文庫) (文庫)
作家になりたいという希望を持ち、東京に出てくる小泉純一青年。下宿のとなりの娘さんとの淡い恋がありながらも、演劇を見に行った先で会った坂井未亡人に惹かれて行き・・・。主人公の心理の動きを内面的・観念的に描写していく漱石に比べると、似たようなテーマを扱っても鴎外は、主人公をどこか突き放すように客体化していて、淡々と表現するのが得意なようです。 この作品も、成長期に特有の心の不安定さは描いているものの、小泉青年にその現実から離れたい、というようなエネルギーはあまり感じられません。とどのつまり現状を肯定してしまうところが、鴎外の良さでもあり限界でもあるのでしょう。古典としていつかは読みたい本。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
人生の生き方を追究した明治のインテリ青年像,
By Saitamazon (埼玉県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 青年 (新潮文庫) (文庫)
鴎外は私にとって過去の作家だ。しかし、彼の全作品は一貫して人生如何に生きるべきかの率直な問いが根底にあるのが私には何よりも好ましく、そういう鴎外に私は痛く共鳴したものだ。その中でも「青年」は田舎から上京してきたインテリ青年が小説家を志しつつ様々な出会いを重ねながら成長する姿を描く所謂教養小説で、鴎外の人生論的探求の姿勢を、明治の文学青年を通して描いた作品であり、その青臭さと高踏派的な姿勢が何とも言えず好きだった。鴎外はやがて題材を同時代ではなく歴史から求めるようになり、更には「渋江抽斎」などの所謂史伝ものに辿り着く。そこで彼が到達した「諦念」という結論は、今の私が得ている人生観とは残念ながら全く異なるし、もはや私には関心がない。 だが鴎外には私の青春時代における懐かしい友のような気持ちが今でもある。「青年」で描いたような明治大正風の文学的・哲学的青年像に憧れがあったのかもしれない。そして私は同時代・同世代の浮薄な若者が嫌いだったと今にして思い出すが、今となってはその嫌悪とも憎悪ともつかぬ思いももうどうでもよいことだ。 しかし、鴎外の人生論的探求姿勢は若い人たちに学んで欲しい。鴎外文学としては本作はとっつきやすい入門篇ではないかと思う。
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