オッフェンバック作曲「青ひげ」の貴重な映像。
本来当劇はフランス語台本であるところ、ドイツ語訳された台本(オッフェンバック晩年はむしろこちらの方がポピュラーとなっていた)に基づくもので、しかもフェルゼンシュタインの演出の東ドイツのテレヴィオペラ、という珍しづくしのソースとなっています。2時間20分ほどの本作を20分ほどカットしたものですが、特段の違和感はありません。
青ひげ役のハンス・ノッカーが比較的しっかりと歌唱を行い、ボベーシュ王役である性格俳優、ヴェルナー・エンダースの演技が卓抜なため、なかなか見応えのある演奏ではありますが、フローレットとダフニスはともに歌唱・演技とも素人っぽく、さらにコーミシェ・オパー管弦楽団の演奏は一杯一杯で、「間違えずに奏している」という程度。全体的に録音がよくないことも相俟って、全編通じてぺしゃんこな音に聞こえます。また、フェルゼンシュタインの演出も狙いすぎの部分が(特に最初と最後に)あり、やはりどうしても違和感があります。映像自体にも、東側の作品特有の濁った薄暗さが全編通じてあり、冷戦時代、東ドイツのクルマなどに漂っていた「もの悲しさ」「いたたまれなさ」のようなものを感じます。
前後しますが作品自体について。「パリのモーツァルト」(オッフェンバックの渾名)にしては些か一本調子かなあ、と思わないでもないのですが、青ひげのアリア中心に面白みのある旋律も時々現れます。演奏次第でいくらかは更に面白くなる作品で、このフェルゼンシュタイン演出の映像作品にとって惜しむらくは、よりオーソドックスな演出・演奏・録音のDVDが手に入りやすい状態であればセカンドチョイスとしてお奨めできるものであるところ、そのようなものがない現状、ファーストチョイスでこの出来では残念ながらなかなか満足しきれないという部分があります。
評価としては、もの珍しさ、ノッカーとエンダースの演技はプラスも、音質の悪さ、映像の悪さ、雰囲気の仄暗さ、脇役の演技マイナスにて、計・星3つとしました。