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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「この主人公は自分で疑う範囲を限定しておいて、それだけを疑うのだ」,
By TAMADON (大阪府) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 青の時代 (新潮文庫) (文庫)
「認識」と「行動」−三島の小説でよく見られるテーマ。つまり人間は頭で考えてから行動するのか、 それともあくまで人間の活動自体がまずあって、それを理由づけて体系化するうえで認識が起こるのか? 三島の持論は「行動が先」だったと思うが、 行動と認識とが規則どおりに動きシステム化されていれば、世の人々は悩まないで済んだはず。 この二者が実体を素直に表に見せず、 時として行動と認識の順序がごっちゃになったり入れ替わったりするから、ややこしい。 三島の意図はこの行動と認識の区別を、人物創作によって整理しようとしたものと私は考える。 「青の時代」は1950年に発表。 前年に発表された仮面の告白の主人公が、 母の胎内から生まれ出た時の情景を覚えている、と独白する箇所が印象に残っている。 なぜなら作中登場人物が自分の行動と認識に一定の制御を与え、理由付けをしており、 いわば三島によって「プログラミング」された人物の創作に至ったと思えるからだ。 この作品では冒頭で作者が人物創造の意図を「序」として告白している。 今までにない人物創作によって真実の人間像に迫ってみせる、という堂々たる宣言ではないか? 確かに尻すぼみの印象はある。起承転結の結がすぼんだような感じ。 主人公と相対する第二キャラの出来も今一つだ。 しかしこの作品はあくまで試行だと考えれば、 金閣寺によって、主人公の行動や思考の動機付け描写の緻密さや、 柏木という第二キャラの造形となって花開いたのだ、と捉えることもできるのではないか。
21 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
読みやすい,
By
レビュー対象商品: 青の時代 (新潮文庫) (文庫)
現実におこった事件を題材にして、ある種の青年の心理を描いている。三島にしては結構読みやすい作品であると思う。主人公のような心理をかかせたらピカイチのような気がする。自分自身にも本書に描かれている青年の心を持っていることを自覚しているのだろう。自意識過剰で孤独で世の中の全ての事象は計算すれば最適な選択が可能であるような青年の心を描き、ラストで子供のときの思い出を重ねることによって複雑な奥行きを作品につけることに成功している。
29 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
「仮面」を鑑賞する三島の気持ち,
By
レビュー対象商品: 青の時代 (新潮文庫) (文庫)
今から四半世紀ほど前に発表された『白昼の死角』(高木彬光)を読んで、詐欺師に憧れた人も多いと聞く。三島の『青の時代』は、この『白昼の死角』と全く同じ人物・事件をモチーフに描いた作品だ。実は本書。三島的にはあまり気に入っていない作品のようではある。しかし読者として見るとき、三島自身の不満の根源と、その不満を超克する三島の将来を伺い見ることができ、非常に興味深い作品となっている。 前半部分。主人公の性格描写や、あるいは主人公が独白する偽善的・偽悪的呟きには『仮面の告白』のテイストを感じる。しかし、後半に入るにつれ、三島は『仮面』における善悪の直接的な探求を求めるのではなく、いわば「仮面それ自体」の探求を試みているかのように主人公を描きなおす。『仮面』の翌年に発表された「もうひとつの仮面物語」とでも言うべきか。 作者の目から見ると、『仮面』と『青の時代』の通底部にある「仮面的主人公」をいかに扱うべきかという「結論」が見えない苛立たしさがあったのかもしれない。しかし。例えば『仮面』を作者自身の「心の叫び」のようなものとして受け取った読者は、『青の時代』における「仮面の相対化」あるいは「作家自身の相対化」を感じ、三島文学のその後を楽しみにしたのではないだろうか。 読者として言えば、非常に興味深い作品であることに間違いはない。
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