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青が散る〈上〉 (文春文庫)
 
 

青が散る〈上〉 (文春文庫) [文庫]

宮本 輝
5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

燎平は、新設大学の一期生として、テニス部の創立に参加する。炎天下でのコートづくり、部員同士の友情と敵意、勝利への貪婪な欲望と「王道」、そして夏子との運命的な出会い―。青春の光あふれる鮮やかさ、荒々しいほどの野心、そして戸惑いと切なさを、白球を追う若者たちの群像に描いた宮本輝の代表作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

宮本 輝
昭和22(1947)年、兵庫県に生れる。追手門学院大学文学部卒業。52年、「泥の河」で第13回太宰治賞を、翌53年、「螢川」で第78回芥川龍之介賞を受賞。62年には「優駿」で第21回吉川英治文学賞を、平成16年には「約束の冬」で第54回芸術選奨文部科学大臣賞を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 318ページ
  • 出版社: 文藝春秋; 新装版 (2007/05)
  • ISBN-10: 4167348225
  • ISBN-13: 978-4167348229
  • 発売日: 2007/05
  • 商品の寸法: 15 x 10.4 x 1 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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By シロフォン トップ1000レビュアー
形式:文庫
このところスポーツ小説が賑やかだ。それらの愛読者のかたがたがこの小説を読んだらいいのになあと思っていたところ、新装版登場! ぜひおすすめしたい。初版刊行は1982年(文庫は85年)。舞台は大学で競技はテニス。数字を見ればずっと昔の本に感じると思うが、色褪せない名作と太鼓判を押す。

近頃話題のスポーツ小説に共通の傾向として気がつくのは、主人公たちが「ひたすらに」競技に打ち込む様が描かれる点。それがすがすがしい魅力を醸しているのは確かだ。対して本書は、舞台が大学ということもあってか、青春期のありとあらゆることが詰まっている。テニスも丹念に書き込まれつつ、恋、友情、初めて正面から向き合う生老病死・・・と盛りだくさん。それらが渾然一体となって、何とも言えない強く深みのある印象を残すのだ。テニスも学生生活も等分に扱われた青春小説と言った方が適切なのだろう。

また本書においては、「光」と「影」も同じ比率で描かれる。主人公・燎平を初め、多彩な登場人物たちの放つ光が鮮やかでまぶしい分だけ、影もまた色濃い。ままならぬ恋、錯綜する想い、焦燥、迷い、過ち、挫折、悲しい宿命・・・どれも痛ましく胸を刺す。しかしその影すらかけがえのないものに思える。おそらくこの時期にしか存在し得ない、極めて強い光と濃い影だから・・・それらを実に鮮明に情緒豊かに写しとっている。

とは言え今の若い皆さんは、燎平をじれったく感じるかなとも思う。他人がみな大きく見え、自分は到底かなわないという思いに苦しむ様こそ、まさに青春期の姿!とわたしなどには思えるのだが。大切な人に対して一歩を踏み出せない恋にも、胸が締めつけられてしまう。皆さんはどうだろう。とにかく読んでみていただきたい。
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8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By sasabon #1殿堂 トップ10レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫
宮本輝氏の代表作が今また新装版として分冊されました。

大阪郊外に新設された私立大学のテニス部を舞台としており、主人公の椎名燎平とその仲間たちの青春群像が描かれています。宮本氏は昭和40年代前半に追手門学院大学でテニスに明け暮れた日常を送られたので、そこでの体験が本作のベースになっています。

「『青が散る』は自伝小説ではなく,青春という舞台の上に思いつくまま創りあげた虚構の世界」だそうですが、登場人物の生き生きとした会話や描写は臨場感溢れるもので、登場人物の中に読み手が自己を投影しながら、昭和40年代前半の大学生達の生き様を追っている内に最後まで引き込まれていきます。この文章表現力は流石に芥川賞作家の力量が伺えました。

登場人物の中でも輝く存在である夏子への燎平の真剣な思いが、最初からラストまで貫かれています。テニスに打ちこむ中での友情や挫折、友の自殺、などを盛り込みながら、ストレートな青春ドラマが展開されていきます。燎平の生き方はとても不器用ですが、直向でもあり、誠実でもあり、共感できる部分も多かったですね。

未熟さや不安定さや不器用さや挫折というものを背負うのが「青春」時代の定めだと思いますので、若い登場人物の心の揺れ動きを見ていますと、多くの読者にとって「あの頃」の思い出とオーバーラップするところもあるでしょう。多感で傷つきやすいという青春の特性が、世代を越えた読者の共感を呼び起こしているのだと思います。

青春時代に失ったものの大切さを浮きあがらせ、紆余曲折の中で成就しえなかったものが「散る」に繋がるわけで、それがメインテーマを構成していると感じました。
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
夏子と燎平 2008/4/20
By いせむし トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫
夏子と燎平は、青春の象徴です。
「青が散る」は、夏子と燎平の出会いからその決別までを描いています。

二人は無垢であり、不器用で、それ故に傷つきます。
それは読者にとって、自分を重ねることのできる、身近で共感できる恋愛です。
20歳前後、子供でも大人でもない時期に、
誰でも燎平が夏子に恋するように誰かに恋した経験があるはずです。
イノセンスな燎平に自分を見いだして、切ない気持ちになるのだと思います。

物語の最後に夏子は彼女の分厚い殻を破って求愛します。
胸を打つシーンです。
一方、燎平は二人の人生が重なり合うことがなかったことに気がつきます。
お互い愛し合っているのに、燎平はそこで別れを決断します。

この恋愛で燎平が下した最初で最後の決断は、夏子との別れです。
若さとは「大事なものを失うこと」でしょうか。
別れていく二人に、読者は、若さ、青春を見ます。
その儚さが美しく、心を打つのだと思います。

あんなに大事な出会いはなかったのに、若さ故に逃してしまう。
青春の苦さとは美しいものだと、
本作を読むたびにつくづく思います。
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