登録情報
|
キャッチャーのカーブのサインに首を振ってエースはストレートを打たれた。それで甲子園行きはふいになった。高校野球の放送を聞きながらワンマンのエースとセンターとキャッチャーとサードは卓を囲んで延々と麻雀をし続けた。昼も夜も。甲子園の優勝校が決まる時まで。エースのパイを握る右手には包帯が巻かれている。エースは負けて手首を切ったのだ。
野球不良少年たちの夏。終われる役をあがるまでパイを引き続けるエース。
1973年、夏の甲子園、2回戦、延長12回の裏、雨の降りしきるなか作新学院の江川卓はマウンドに野手を集めた。1死満塁、カウント2ー3。ワンマンの江川がはじめてみんなに聞いた。何を投げる?江川卓の投げたストレートは大きく外??押し出しのサヨナラ負け。江川卓は夏はそこで終わる。
おそらく江川はそこで夏を終えることができたのだ。終わらなかったエースは呟く。
もし取り返しのつかない一球があるとして……それを取りかえす事が……
そう、取りかえすことは絶対にできないのだ。そんなことは分かっている。麻雀で取り返すことはできないのだ。
しかし、松本は取り返しのつかないはずの結論に……結論を書く。
『ピンポン』でペコがスマイルに勝つのは何故か。『夏でポン』のラストでそれが分かる気がする。
松本大洋は不良のヒーローを待望しているのだ。そして松本はそっとそれを見守っる男の子なのだ。松本大洋の青春ブルースは徹底して湘南している。
豊田利晃が俺しか映像化できないと豪語して撮った『しあわせなら?をたたこう』を含む『青い春』には松本大洋作品のエスキースに充ちている。多くの作品がこの短編集の作品をベースにしている。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|